ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
日本に巣食う「学歴病」の正体

一流企業のマネジャーが明かす、
学歴重視の新卒採用をやめられない理由

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第3回】 2016年1月26日
1
nextpage

本当は実力よりも学歴重視?
人気企業の新卒採用基準

企業社会に「実力主義」の風潮が広がって久しいが、依然として学歴重視の新卒採用が行われている企業は多い。ある一流企業のマネジャーが内情を明かす

 今回は、あるメジャーなベンチャー企業でマネジャーを務める人物に「新卒採用」について学歴という切り口で取材を試みた。

 この会社は、現在の正社員数が1000人近い。マネジャーには7~10年ほど前に正社員が100~300人だった時期のことを集中的に尋ねた。この時期から、日本のベンチャー企業の多くが「学歴」を意識した新卒採用を本格化させるからだ。2000年代にベンチャーで「学歴病」が浸透し始めた、初期のステージと言える。

 聞き取りの対象は、営業本部マネジャーの男性A氏。創業期から正社員数が100~300人になるまでの時期に、新卒の面接試験などに関わっていた。彼の話を聞くと夢や希望がなくなるかもしれないが、「学歴主義ではなく実力主義」というイメージも手伝って学生に人気の高いベンチャー企業にも、「学歴主義」の考え方が根付いていることがわかる。同社に学歴病が根付いて行くプロセスを知ることで、「採用における学歴とは何か」を考えるための参考にしてほしい。今回はA氏へのインタビュー形式でお伝えする。

 始めにA氏のプロフィールをお伝えしておく。彼は39歳で、1990年代後半に創業したITソフトウェアのベンチャー企業(正社員数は約900人、関連会社を含めると2300人)で営業本部マネジャーを務める。部下は40人前後。最終学歴は高卒。20代前半のとき、中途採用で入社(2000年)した。


 ――現在、社員の8~9割は大卒のようですが、Aさんは高卒でありながら活躍されていますね。

A氏 私は、学歴による区別や差別で悩んだことがありません。今の会社に入ったのが、2000年。その頃、正社員数は15~20人ほど。まさに、どベンチャーの頃です。大卒が2人、専門学校と高卒が私を入れて数人。全員が、中途採用組。職場で学歴の話題になったことすらないのです。

――会社が新卒の採用に踏み切った経緯は何ですか。

A氏 2003~07年に、新卒採用を本格的にスタートさせました。社員数が50~70人に増えていた頃です。社長(現グル―プのCEO)の強い意向です。中途採用者は辞めていくケースが多く、離職率が高いままだったのです。確かに新卒を雇うと、定着率は確実に上がりました。

 私の経験で言えば、正社員数が50~100人ほどになったら、学歴を意識した採用をしたほうがいい。150~200人になってからでは、タイミングが遅い。今も中途採用は行っています。新卒、中途の双方の採用を継続していくのが、業績を急上昇させるためのベンチャーの鉄則の1つだと思います。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


日本に巣食う「学歴病」の正体

 今の日本には、「学歴」を基に個人を評価することが「時代遅れ」という風潮がある。しかし、表には出にくくなっても、他者の学歴に対する興味や差別意識、自分の学歴に対する優越感、劣等感などは、今も昔も変わらずに人々の中に根付いている。

たとえば日本企業の中には、採用において人事が学生に学歴を聞かない、社員の配属、人事評価、昇格、あるいは左遷や降格に際しては仕事における個人の能力や成果のみを参考にする、という考え方が広まっている。しかし実際には、学歴によって選別しているとしか思えない不当な人事はまだまだ多く、学閥のようなコミュニティもいまだに根強く存在する。学歴が表向きに語られなくなったことで、「何を基準に人を判断すればいいのか」「自分は何を基準に判断されているのか」がわかりずらくなり、戸惑いも生まれている。こうした状況は、時として、人間関係における閉塞感やトラブルを招くこともある。

 これまでの取材で筆者は、学歴に関する実に多くのビジネスパーソンの悲喜こもごもを見て来た。学歴に翻弄される彼らの姿は、まるで「学歴病」に憑りつかれているようだった。学歴は「古くて新しい問題」なのだ。本連載では、そうした「学歴病」の正体を検証しながら、これからの時代に我々が意識すべき価値基準の在り方を考える。

「日本に巣食う「学歴病」の正体」

⇒バックナンバー一覧