DIAMOND CFO FORUM

CFO進化論【後篇】
CFOと経理・財務部門の役割は拡大・変化している

髙見陽一郎・EYアドバイザリー パートナー
田上 純・EYアドバイザリー シニアマネージャー

次世代CFOの
キャリア・デザイン

 すでに見てきたように、日本企業のCFOと欧米企業のCFOとの間では課題意識に違いが見られるものの、前者の81%が「経理・財務部門の人材育成」と回答し、これが第1位であったように、次世代CFO人材として、どのような人材を、どのように育成し、継承していくかは重要な課題の一つと認識されているといえる。

 目指すべきは、図表2の[3]パフォーマンス・マネジャー、そして[4]ビジネス・パートナーである。

 そこへの道は、少なくとも2通りあるだろう。すなわち、先に紹介したユニリーバやフィリップスのように、さまざまな地域や事業部門の経理・財務組織を経験させながら、この分野のプロフェッショナルとして陶冶していくか、P&Gやデュポンのように、財務・経理部門の経験もキャリアの一つと考え、ゼネラル・マネジャーとして育成しながら、どこかの段階でCFO候補としての経験を積ませるかのいずれかである。

 ただし、こうしたキャリア・パスを検討する前に、CFOと経理・財務部門に今後期待される役割を再定義する必要がある。その際、欧米企業と日本企業の比較が役に立つ。

 デューク大学フュークア・スクール・オブ・ビジネスとアメリカ『CFOマガジン』誌の共同調査「CFOグローバル・ビジネス・アウトルック・サーベイ」においても、「アメリカのCFOは戦略的意思決定を担う最高経営者であるのに対し、日本のCFOは経理に関する日常的・業務的な意思決定を行うスーパー経理部長としての性格が色濃い」と指摘されている(注1)

 この点に関して、我々のコンサルティング経験から、「欧米企業のCFO組織では一般的だが、日本企業では必ずしもそうとは言いがたい活動」を洗い出してみた。

企業価値の評価と検証、および向上策の立案
グループ全体および各事業部門の戦略立案やレビュー
経営企画、IR(投資家向け広報)など、他の職能との協働

 このように見ると、欧米企業では、CFOと経理・財務部門のミッションとして「企業価値の最大化」を第一としているが、日本企業の場合、「経理・財務機能の向上」という認識が強い。

 こうした状況を変えていくには、経営企画部門と経理・財務部門の統合、経理・財務機能のグローバルな統合と最適化、CFOの権限と役割の再定義といった組織的な施策の一方で、CFO組織人材のビジネス・リテラシーの習得、他部門での経験など、CFO組織の自己変革が同時に必要だろう。

 そのためには、CFOが経理・財務部門のチェンジ・リーダーとなって、次世代の経理・財務部門のあるべき姿を描き、そのために不可欠な能力やスキル、システムや教育研修などを特定し、具体的な実行計画に落とし込まなければならない。もちろん、言うは易しであるが、幸いにして、CEOや他の役員たちも、CFOへの期待を高めている。ならば、後は決断と実行である。

 藤沢武夫氏は、いみじくもこう述べている。

 「世界を常にリードしてゆける、つまり、ここ1年や2年の勝負ではなく、50年、100年というものをリードしてゆける体制をつくって、次の人にバトンを渡してゆく義務をわれわれは持っている(注2)

注1)Duke University Fuqua School of Business and CFO Magazine, “CFO Global Business Outlook Survey,” 2015.

注2)藤沢武夫『松明は自分の手で』(産業能率短期大学出版部、1974年。2009年にPHP研究所が復刻)

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「トップ・マネジメントの教科書」CEOとCFO その新しい関係

グローバル経済の本格化によって、歴戦のビジネスパーソンの経験と勘は裏切られる可能性が高まった。トップマネジメントは、リスクを洗い出し、測定し、定量化し、それを踏まえて経営戦略を説明できなければいけない。その際、CEOはCFOの力を借りずしては考えられない。CFOには経営陣の中で論理的な判断のよりどころとなり、CEOを補完すると同時に、戦略志向やビジネスリテラシーも求められている。新しい時代のCEOとCFOの関係はどうあるべきかを求め、取材した。

「「トップ・マネジメントの教科書」CEOとCFO その新しい関係」

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