「効率的に稼ぐ」から
一歩先へ

ダノンのような世界的大企業が、バングラデシュに工場をつくり、貧困層にヨーグルトを販売するというのは、それまでの定説に反する意思決定でした。各地域の経済的成熟度などを基準に、効率的に稼げる市場を求め進出先を決めていくのが、従来のグローバル企業の基本的なあり方だったからです。

しかし、ダノンのリブー会長は、1年近くにおよぶ事前調査を自社の経費で行い、グラミン・ダノンを立ち上げるという英断を下しました。

「栄養不足に悩む子どもたちのための小さなヨーグルトを、現地の女性が働く工場でつくりたい」という願いからはじまったこのプロジェクトは、もちろん多く人から共感を得ていました。

一方、ダノンには、商品の技術開発、工場の設計開発、利益が出るような価格設定など、前代未聞の厳しい条件があらゆる面で立ちはだかっていたそうです。これをすべて乗り越えるには、数々のイノベーションが欠かせませんでした。

しかし、バングラデシュの子どもたちのために、貧しい人々のためにと、ダノンの社員が一丸となって取り組んだ結果、すべての課題はクリアされ、グラミンレディが働くヨーグルト工場が見事に実現しました。そして、これをきっかけとして世界中に「ソーシャルビジネス」という言葉が広がることになったのです。

この事例が大きな影響力を持った理由はいくつかありますが、ここで最も重要なのは、困難な状況を克服して生み出された効率的な商品開発・工場設計のノウハウが、のちにバングラデシュ「以外」の工場でも、大いに役立ったということです。