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一生モノのファイナンス入門
【第6回】 2016年4月14日
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朝倉智也

ファイナンスの理解に必要な会計の基本(5)
――キャッシュフローの動きで会社は8つのタイプに分かれる

「ファイナンス」や「ファイナンス理論」と聞いて、みなさんはどんなことを連想しますか? ファイナンスとは端的に言えば、「企業や事業の価値を最大化するためにはどうすればいいかを理論的に考えるためのツール」です。本連載では、モーニングスター株式会社代表取締役社長の朝倉智也氏の著書一生モノのファイナンス入門の内容をベースに、ファイナンスの基本のキからわかりやすくお伝えしていきます。

 前回の連載の最後に、会社はキャッシュフロー(CF)の動きによって8つのタイプに分けられると書きました。今回は、その点を詳しく解説していきます。

(1)営業CFプラス・投資CFマイナス・財務CFマイナス=健全型

朝倉智也(あさくら・ともや)モーニングスター株式会社代表取締役社長(東証JASDAQ上場企業)1966年生まれ。1989年慶應義塾大学文学部卒。銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事した後、95年米国イリノイ大学経営学修士号取得(MBA)。同年、ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資金運用全般、子会社の設立および上場準備を担当。98年モーニングスター株式会社設立に参画し、2004年より現職。第三者投信評価機関の代表として、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努めるとともに、各上場企業には、戦略的IR(Investor Relations:インベスター・リレーションズ)のサポートも行っている。他にSBIグループ各社の重要な役員を兼任する。著書に『30代からはじめる投資信託選びでいちばん知りたいこと』(ダイヤモンド社)、『低迷相場でも負けない資産運用の新セオリー』(朝日新聞出版)、『新版 投資信託選びでいちばん知りたいこと』(ダイヤモンド社)などがある。

 営業キャッシュフローがプラス、投資キャッシュフローがマイナス、財務キャッシュフローがマイナスの会社は、「健全型」に分類できます。

 営業キャッシュフローがプラスになっているということは、利益が出ており、事業が順調な会社だといえます。

 また、将来に向けた投資に積極的な会社は、投資キャッシュフローがマイナスになるのが一般的です。

 ただし、有価証券の売却や子会社・関連会社などの売却により、一時的にプラスになる場合もあることに留意してください。

 また、事業活動が順調な企業は累積の利益が大きく、株主還元のために配当の支払いや自己株式の取得等に積極的なケースが多いといえます。このため、こうした企業は財務キャッシュフローは通常、マイナスになります。

 ただし、内訳は必ず確認しましょう。借入金の返済や社債の償還などによってマイナスになっているケースは、リストラや大幅な事業見直しの場合もあるため、注意が必要です。

(2)営業CFプラス・投資CFマイナス・財務CFプラス=積極型

 営業キャッシュフローがプラス、投資キャッシュフローがマイナスということは、(1)と同様、事業が順調で投資を積極的に行っている会社だと考えられます。

 また、機械や工場などの大きな設備投資や、企業買収(M&A)などを積極的に展開している企業では、現状の資金に加えて更なる資金調達を行う必要があります。このため、こうした「積極型」企業では、財務キャッシュフローはプラスとなります。

(3)営業CFプラス・投資CFプラス・財務CFプラス=安定型

 事業が順調で営業キャッシュフローがプラスになっている会社です。将来に向けた投資には積極的ではなく、設備や投資先の見直し等で一部資産の売却も行っている場合、投資キャッシュフローもプラスになります。

 また、手元の現預金を厚くしておくことを目的に資金調達を行う会社では、財務キャッシュフローもプラスとなります。

 このように、投資に慎重な姿勢や現預金をできるだけ多く保有する姿勢からは、安定性に重きを置いている「安定型」企業であることがうかがえます。

(4)営業CFプラス・投資CFプラス・財務CFマイナス=改善型

 営業キャッシュフローはプラスで、利益は稼げている会社です。資産を売却するなどして投資キャッシュフローがプラスになっているのは、財務体質改善を目的としていると考えられます。

 さらに、借入金の返済や社債償還などで財務キャッシュフローがマイナスになっているとすれば、企業活動全般にわたり、改善を図っている「改善型」企業だと見ることができます。

(5)営業CFマイナス・投資CFマイナス・財務CFプラス=勝負型

 営業キャッシュフローがマイナスということは、事業の状態はあまり芳しくないと言えます。

 しかし、それでも投資キャッシュフローはマイナスですから、積極的に投資をしていると考えられます。そして財務キャッシュフローがプラスであることから、資金調達を行っていることもわかります。

 こうした状況から、投資には消極的で資産の売却を進めるような安定型とは違い、積極的に既存事業の改革や新規事業の展開で「勝負型」の企業だと考えられます。

(6)営業CFマイナス・投資CFプラス・財務CFマイナス=リストラ型

 営業キャッシュフローはマイナスなので、事業は厳しい状況です。

 さらに、投資キャッシュフローはプラス、財務キャッシュフローはマイナスなので、資産を売却することで何とか借入金の返済や社債の償還に対応している状況でしょう。まさにリストラ真っ最中の「リストラ型」企業だと考えられます。

(7)営業CFマイナス・投資CFマイナス・財務CFマイナス=大幅見直し型

 営業キャシュフローがマイナス、財務キャッシュフローがマイナスということは、事業は厳しい状況で、資金の返済を余儀なくされている状態でしょう。

 投資キャッシュフローはマイナスなので、事業自体を大きく見直して次の一手に向けた投資を行っているのではないかと考えられます。「大幅見直し型」の企業です。

(8)営業CFマイナス・投資CFプラス・財務CFプラス=救済型

 営業キャッシュフローはマイナスなので、利益を出せていない相当厳しい状態にあります。投資キャッシュフローがプラス、財務キャッシュフローもプラスということは、何とかして資金を確保しなければつぶれてしまうような深刻な局面を迎えていると言えるでしょう。

 資金の手当てのため、資産の売却と資金調達を行い、会社を存続させようと努めていることがうかがえます。「救済型」の企業です。

  最後に、ここまでのことを以下の図表にまとめましたので、ご確認ください。

 

※次回は、4月19日(火)に掲載します。

 

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朝倉智也(あさくら・ともや)  [モーニングスター株式会社 代表取締役社長]

1989年慶應義塾大学文学部卒。銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事した後、1995年米国イリノイ大学経営学修士号取得 (MBA)。その後ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資産運用全般、子会社の設立および上場準備を担当。1998年、モーニングスター株式会社設 立に参画し、米国モーニングスターでの勤務を経て、2004年より現職。第三者の投信評価機関として、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投 資家の的確な資産形成に努める。 主な著書に『〈新版〉投資信託選びでいちばん知りたいこと』、『30代からはじめる 投資信託選びでいちばん知りたいこと』(ともにダイヤモンド社)、『低迷相場でも負けない資産運用の新セオリー』(朝日新聞出版)がある。

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