レンタル化によって
環境負荷軽減効果も

 各企業における物流課題が切実なものになっていることもあり、JPRの事業は着実に重要度を増している。その背景には、企業の環境意識の高まりもありそうだ。レンタルパレットの共同利用と共同回収がさらに普及すれば、パレット自体の総量が減り、パレットを回収するために各社が走らせるトラックの量が減る。

 「2007年に実施した東京海洋大学との共同研究では、自社パレットを運用する場合と比べて、共同利用・回収の仕組みを利用した場合では、CO2の排出量を約83%削減できるとの結果を得ました。私たちの試算では、自社パレットを使ったときのCO2排出量は13.6万トン。これを全てレンタルパレットに置き換えれ2.3万トンに減らせます(図)」と加納社長。この共同研究は、日本物流団体連合会の「物流環境大賞」特別賞(09年度)を受賞している。

 パレットを通じて培った技術やノウハウを、同社はコンサルティングという形でも提供している(表)。例えば小売業では、カートラックと呼ばれる運搬用の手押し車が数多く使われている。その管理に課題を抱えていたイオングローバルSCMから、同社に相談があったという。

 「以前は、所在が確認できないカートラックが約3割ありました。そこで当社が物流容器の個体管理システムを提供。これにより、99.6%のカートラックが把握できるようになりました(導入前の実証実験結果)」

 RFID※2を活用したソリューションは進化を続けている。同社はすでにほぼ100%のパレットにRFIDを貼付済み。いずれはパレットの上の商品を含めて見える化できるようになるという。

 「現在、メーカーや流通各社と研究開発を進めている段階です。パレットとパレット上のコンテナ、コンテナの中の商品を含めた多階層の管理までできれば、荷物が到着したときの検品作業を自動化できます。このサービスは17年6月にリリースする予定です」と加納社長。検品には相当の手間がかかるだけに、特に流通各社からは大きな期待が寄せられているようだ。

 TPP合意などもあり、今後は国境を越えたモノの動きがさらに活発化するとみられる。パレットの動きも、同様にグローバル化する可能性が高い。将来的には、国際的なパレット標準化の動きも予想される。ただ、日本においては、国内の標準化さえ道半ばというのが現状だ。

 「先進各国の中で、日本は後れ気味です。オーストラリアは標準化率99%、欧州は90%と言われているのに対して、日本は35%。少子高齢化の中でも効率化を促進し経済発展するためには、標準化を進める必要があります」と加納社長は訴える。国内の標準化で後れを取れば、日本標準とは異なる海外の標準規格が入り込んでくる可能性がある。こうした規格間競争も、グローバル競争の一断面である。

 ※2 ICと小型アンテナが組み込まれた微小な小型チップ。電波を介して情報を読み取ることができる。