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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層

サミットでドイツを協調的財政出動に巻き込めない理由

高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]
【第208回】 2016年5月25日
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世界最大の経常収支黒字国ドイツの掟破り

 最近、伊勢志摩サミットを展望し、財政出動への期待が高まっている。そのなかでは、ドイツの反対をいかに抑えるかがカギを握っている。伊勢志摩サミットで日本はドイツを説得できるかも大きな課題だ。

 図表1は世界の経常収支の比較である。今日、世界的にみて地域別で最大の経常収支の黒字を抱えるのはドイツを筆頭にしたユーロ圏である。歴史を振り返れば、1970年代以降の変動相場制移行後の世界の経済秩序の掟として、常に経常収支の最大黒字地域が、財政も含めた内需拡大で世界経済をけん引する“機関車”であることが暗黙裡に求められてきた。同時に、自国の内需を海外に明け渡すべく、自国通貨高圧力を受けてきた。

 具体的には、1970年代以降、日本とドイツ(当時は西ドイツ)が機関車の役目を果たし、2000年代に世界最大の経常収支黒字国の座が中国に移れば、2008年には中国が財政を拡大して世界の機関車の役目を果たした。同時に、通貨高の圧力を受け入れてきた。

 そうしたなか、今日、世界最大の黒字国のドイツを中心にユーロ圏は頑なに財政緊縮を掲げ、「金利水没」による通貨安競争によって外需拡大を志向する。それは、他国の外需を奪い取る近隣窮乏化になる。

 
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高田創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

たかた はじめ/1958年生まれ。82年3月東京大学経済学部卒業、同年4月日本興業銀行入行、86年オックスフォード大学修士課程修了(開発経済学)、93年審査部、97年興銀証券投資戦略部、2000年みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長、06年市場調査本部統括部長、チーフストラテジスト、08年グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長、チーフストラテジスト、11年より現職。『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など著書も多い。


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