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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

日本の財政拡大提案が独英の理解を得られない理由

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第61回】 2016年5月12日
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現在の世界経済の問題は短期的な財政拡大では解決できない

 安倍晋三首相のヨーロッパ歴訪は、サミットに向けて、財政拡大と為替介入について欧州諸国首脳の理解を求めることが目的だった。しかし、意図したような理解は得られなかったようだ。

 それも当然で、現在、先進諸国が直面する問題は、財政拡大や為替操作のような短期的マクロ政策では解決できないからだ。世界経済の現状についての的確な理解の下に、構造改革の重要性を認識することが必要だ。

現在の世界経済の問題は
短期的な財政拡大では解決できない

 財政支出はGDPの構成要素なので、それを増大すれば、短期的には必ずGDPの成長率は高まる。しかし、長期的な意味での潜在成長率がこれによって高まることはない。

 そして、現在の先進国経済が直面している問題は、まさしく、潜在成長率の低下である(このことは、しばしば「自然利子率の低下」と表現される)。

 だから、現在、世界経済が抱える問題は、短期的な財政拡大によって解決できるものではない。むしろ、財政赤字が増大すれば、長期的な問題はより深刻化するだろう。

 したがって、短期的な成長率引き上げのために財政拡大を行なうなどとする国はない。

 ドイツのメルケル首相の承認を得られるかどうかが最大の難関と考えられていたようだが、イギリスのキャメロン首相からの理解も得られなかった。

 彼らの反応は、構造改革成長戦略のほうが重要だという認識である。まさにこのことこそが問題なのだ。

 安倍首相が協調的財政拡大策を提案するのは、1985年のプラザ合意における「機関車論」(日本と西独が財政支出を拡大する)が念頭にあるからかもしれない。このときに問題になったのは、日本やドイツの製造業の競争力が強く、アメリカの製造業、とくに自動車産業が縮小したことである。

 これは、為替レートの調整によってかなりの程度は解決される問題であった。したがって、為替レートへの協調介入と機関車論が唱えられたのは、ある意味では自然な流れであった。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて

アメリカが金融緩和を終了し、日欧は金融緩和を進める。こうした逆方向の金融政策が、いつまで続くのだろうか? それは何をもたらすか? その先にある新しい経済秩序はどのようなものか? 円安がさらに進むと、所得分配の歪みはさらに拡大することにならないか? 他方で、日本の産業構造の改革は遅々として進まない。新しい経済秩序を実現するには、何が必要か?

「野口悠紀雄 新しい経済秩序を求めて」

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