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山田厚史の「世界かわら版」

「日露接近」がサミット真の懸案、首相は欧米を説得できるか

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第109回】 2016年5月12日
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 安倍首相はロシア南部のソチに赴き、プーチン大統領と会談、「新たな発想に基づくアプローチ」で両国の関係改善を促した。焦点は北方領土。さらに日ソ平和条約、シベリア共同開発へと広がる。歓迎できる方向だが気になることある。安倍首相はどこまで本気なのか?

 日本政府が「国際社会」と呼ぶアメリカやEU諸国がこの動きを歓迎するはずはない。抵抗を突破する気概が首相にあるか。クリミア半島の併合やウクライナ紛争でロシアと「国際社会」は険悪な関係だ。プーチンが安倍を誘い込むのを欧米諸国は黙って見ていないだろう。

 伊勢志摩で行われるG7サミットで「日露接近」は隠れたテーマに浮上した。「日本は何を考えているのか」という疑念を安倍首相は払拭できるだろうか。

経済政策は出来レース
サミット真のテーマは日露接近

 G7サミットは主要先進国が結束をアピールする政治ショーとなった。ホスト国の首相の顔を立てるのがサミットのならわしだ。日本が取り組む近隣外交を他国が表だってなじることは、まずないだろう。

 日本の役目は各国が合意できるG7声明をまとめること。成長に陰りが出た世界経済に「金融緩和、財政出動、構造改革」の三本に矢をぶち上げる手はずになっている。

 堅実財政にこだわるドイツは財政出動に懐疑的だが、各国が足並みそろえて景気対策を表明することに反対はしない。財政出動で声を合わせても、どこまで踏み込むかは、それぞれの政府が決めることだ。

 表舞台の政策は官僚がお膳立てする。ホスト国の首相は、事前に各国を回り「よろしく」と挨拶するのが仕事だ。首脳を集めることに意味がある。勢ぞろいし、にこやかに結束する映像がメディアに流れれば「成功」なのだ。テロでも起きなければ、サミットの表舞台はシャンシャンで終わるだろう。

 問題は舞台の裏だ。日本はロシアとの関係を説明しなければならない。

 外交の場でしばしば語られる「力による現状変更」。日本では尖閣諸島や南シナ海での中国の動きを指すが、欧米ではプーチンの振る舞いにこの言葉が使われる。クリミア、ウクライナだけでない。シリア内戦でもロシア軍の空爆は容赦なく地上の命を奪い、アサド政権の支配地を拡大している。プーチンは嫌われ、危険視されている。

 日露接近は、孤立するプーチンが日本を抱き込む外交戦略でもある。北方領土という餌で誘き寄せ、窮地に立ったロシア経済をジャパンマネーで潤そうという筋書き。EUやアメリカはそう見るだろう。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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