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中国で買春を疑われた若者の死に国民の怒りが爆発

陳言 [在北京ジャーナリスト]
2016年5月26日
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この5月に起きた事件に中国の全国民の注目が集まっている。買春を疑われた若者が捜査中に死亡したというものだ。この悲劇の背景にある本当の悲劇は、当局の人権無視の行動を防ぐ、法や制度の改革に結び付かないということにある。

行き過ぎと思われる逮捕劇に、民衆から疑問の声が上がるも、警察側は始めから終わりまで正面から回答しようとせず、さらなる民衆の怒りを誘っている

 5月7日、中国で全国民が注目するある事件が発生した。

 中国人民大学の修士課程を卒業した雷洋は、環境保護業務に携わる29歳の普通の青年であり、生まれてひと月にも満たない赤ちゃんのパパでもあった。警察の話によれば、空港に人を迎えに行った際に「買春」の容疑で逮捕された彼は、車から飛び降りて逃げようとし、その後に「体調不良」で突然死亡したという。この事件は、今年に入ってもっとも世論を揺り動かす出来事となった。

雷洋事件で民衆の怒りが爆発

 警察の発表によると、5月7日夜9時頃、北京市郊外の昌平区東小口派出所の副所長と4人の警官が、売春に関与していると噂される「足ツボマッサージ店」付近を張り込んでいたところ、ちょうど足ツボマッサージを終えて出てきた雷洋が「そわそわした様子で」西へと歩き去っていこうとするところを目にした。警察は身分を明かした後、「買春に関係した容疑」で雷洋を拘束しようとした際、彼は激しく抵抗した。彼は逃亡も試みたが、派出所に送られる途中で心臓病により突然死亡したという。

 のちのメディアの報道によると、周囲の目撃者の話では、制服を着用していない三人の男が「助けて」と叫ぶ若者を、後ろ手に地面に叩き付け、暴れる彼を一台の黒い車に押し込めたが、10分ほど後に再び彼はその黒い車から2人の男によってマイクロバスに「拉致された」という。

 この黒い車の中での十数分間に何が起きたのか、それは誰にもわからないし、警察側もずっと説明してはこなかった。事件が発生してからわずか2日で大きな話題となり、社会の高い注目を集めるようになった。しかし、人々が得ることができたのは警察、メディア、家族などからの断片化した情報にすぎず、当時の真相を復元することはどうしてもできなかった。

 家族やメディア、社会が警察側に拘束時の映像資料を要求したが、警察側は「撮影機器が暴れた雷洋によって壊されてしまい、地域に備え付けられた監視カメラも壊れていた」という。あるメディアはそれに対し、「警察の業務用撮影機器は、3メートルもの深さの穴の中に放り投げても壊れないのではなかったのか」と反駁し、警察はそれに対し、「私服警官が使っているのは携帯電話の撮影機能だった」と語った。

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陳言 [在北京ジャーナリスト]

1982年南京大学卒。『経済日報』に勤務してから、1989年に東京大学新聞研究所、慶応大学経済学研究科に留学、博士課程終了、萩国際大学教授。2003年に帰国。月刊『経済』主筆。2010年から日本企業(中国)研究院を設立、執行院長。ダイヤモンドオンライン、『週刊東洋経済』『アエラ』『中国経済週刊』『中国経営報』などのメディアに数多くの記事を掲載。2015年日本語日刊紙『速読中国』を創刊して編集長を兼任。


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世界第2位の経済大国になった中国は、依然として猛烈なスピードで変化している。一方、中国にはウェブ系も含めると、何千というメディアが存在し、情報が溢れかえっている。北京在住の経済ジャーナリスト・陳言氏が玉石混交の情報の中から、中国の対外関係、多国籍企業、技術革新、中国の経済政策など日本経済や日本企業に影響を及ぼす情報を選りすぐり解説する。そこからは日本のメディアが伝える中国とは、違った姿が見えてくる。

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