「2024年問題」などの物流危機への懸念が高まる中、新たな輸送の担い手として期待を集めている貨物鉄道。その中でも日本貨物鉄道(JR貨物)は、全国ネットワークを持つ唯一の貨物鉄道会社だ。
貨物鉄道輸送の大きな特長は、貨物列車1本で大型トラック最大65台分の貨物を運べる大量輸送性と、CO2排出量がトラックの約11分の1という環境性能にある。
「24年の数年前から、トラックから鉄道にシフトしたいという依頼が増えてきました。現在も将来のドライバー不足を見越した引き合いが多く寄せられています」と、同社の執行役員鉄道ロジスティクス本部営業部長を務める麦谷泰秀氏は説明する。
加えて「医薬品など従来少なかった品目の取り扱いが増えたほか、300~800キロメートルの中距離帯での輸送ニーズが急増しています。労働時間規制により、これまでドライバーが日帰りやワンマン運行ができていた区間が『運べない距離』になったことが要因です」と、新たなニーズへの手応えを語る。
日本貨物鉄道麦谷泰秀執行役員
鉄道ロジスティクス本部 営業部長
注目の高さもあり、個人消費の低迷により国内輸送需要が低調にとどまる中にあって、同社の25年度の鉄道コンテナ輸送量はプラス基調を維持している(26年2月現在)。
大型トラックと同容量のコンテナを拡充
新たな施策展開の一つが、大型トラックと同容量の31フィートコンテナの増備だ。トラックから鉄道にモーダルシフトする場合、主力の12フィートコンテナでは輸送ロットや貨物の積み付け方法を変える必要があったが、31フィートコンテナを使えばトラックからのスムーズな切り替えが可能になる。JR貨物は今期までに、31フィートコンテナを60個増備し、運用を200個体制まで拡充した。
大型トラックと同容量の31フィートコンテナ。今期までに60個増備し、運用を200個体制まで拡充した
「お客さまからは大型トラックと同じ運び方ができると好評です。往復での利用を増やすため、同じ輸送区間で複数荷主を往路と復路で組み合わせる『ラウンドマッチング輸送』の提案を強化しています。片荷(片道回送)を解消し、実車率を高めることでコストメリットも生まれます」(麦谷氏)
26年3月14日のダイヤ改正では、17年ぶりにコンテナ輸送力を増強。東京→大阪間の中距離帯に新たにコンテナ列車を新設したほか、名古屋→福岡間などの需要が高まっている区間にも新たな輸送力を設定。31フィートコンテナの取り扱いや、自然災害などによる輸送障害に対応するためのBCP(事業継続計画)機能も強化した。
改正物流効率化法の施行により4月から大手荷主企業に選任が義務付けられる「CLO(物流統括管理者)」に向けた貨物鉄道輸送のアピールにも力を入れる。「物流の持続可能性に対する社会や企業の関心が高まる中、CLO設置企業に鉄道の強みやメリットを改めて訴求していくことで、モーダルシフトの受け皿としての当社の役割をより広く認知してもらえるように努めていきます」と麦谷氏は力を込める。
「鉄道を超える」総合物流戦略を推進
他方、JR貨物は長期ビジョンで掲げる「鉄道を基軸とした総合物流企業グループ」の実現に向けた戦略も強化中だ。その一環で、25年4月にグループの日本運輸倉庫を「JR貨物ロジ・ソリューションズ」に社名変更し、総合物流戦略を推進する中核会社に位置付けた。
同社は貨物駅内にある倉庫を使いながら「倉庫+輸送」の包括的なサービスを提供しているが、これまでと大きく違うのは「鉄道だけにこだわらない」ことだ。
同社の取締役営業本部副本部長兼総合物流部長を務める五島洋次郎氏は「JR貨物のグループ会社として鉄道輸送に強みがあることは確かですが、お客さまの立場に立って物流の最適解を示すことがわれわれの立ち位置です。トラック輸送が最適だと判断すれば、トラックを生かしたソリューションを提案します。鉄道・トラック並行の提案もその一つです」と強調する。
JR貨物ロジ・ソリューションズ五島 洋次郎取締役
営業本部副本部長 総合物流部長
麦谷氏も「JR貨物本体の営業では、お客さまが求める輸送条件が鉄道に合わなければそこで提案が止まっていました。それに対して、JR貨物ロジ・ソリューションズは、鉄道だけでは実現できないニーズにも対応が可能。一緒に付加価値を高めていきたいと考えています」と狙いを説明する。
そのために必要となるトラック輸送力の調達では、ほかのグループ会社や鉄道利用運送事業者に加え、求貨求車サービスを展開する大手物流会社とも連携。「倉庫、鉄道、トラックなどの物流機能を有機的に組み合わせて、お客さまに最適なソリューションを提案できる“物流プロバイダー”としての役割を果たしていきます」(五島氏)と語る。
すでに大手引っ越し事業者との協業もスタート。引っ越し荷物を貨物駅内の倉庫で集荷のトラックからコンテナに積み替え、配送先の最寄り駅まで鉄道輸送する取り組みを拡大している。
大手引っ越し事業者との協業の様子。トラックで運んだ荷物を貨物駅内の倉庫でコンテナに積み替え、最寄り駅まで鉄道輸送する
長距離輸送を担うドライバー確保が難しくなる中で、トラックと鉄道を組み合わせた「モーダルコンビネーション」の好事例として注目されている。
同社では「リソース不足の時代、鉄道とトラックはライバルではなくパートナーと考えています。今後は海運や航空とも連携を深め、鉄道利用にとどまらない、お客さまにとって最適な物流の形を提案していきます。そのためには『駅から駅まで』という従来の発想を脱し、お客さまの物流課題を解決できる人材の育成も急務です。それが貨物鉄道の価値を高めると確信しています」(五島氏)と展望する。
