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献魂逸滴 極上の日本酒を求めて

三芳菊――日本酒の既成概念を解き放つ
個性際立つ“芳醇無比”の香味酒

柳 紀久夫
【第16回】 2010年10月15日
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 この鮮烈なブルーボトルの酒をご存知だろうか。

「三芳菊」のベンチマークとしたい商品。「雄町」仕込みに比べると立ち香こそ控えめだが、ベリーA系のほのかで優美な香りが印象的。口に含むと十分な旨味の奥にカミツレ草を感じさせる香り。後から酸味と苦味が追随するがバランスは抜群。

 保守派を自認する日本酒ファンなら「女性ユーザーに迎合しすぎではないか。軟弱。けしからん」とそっぽを向くか、あるいは怒り出す方もいるかもしれない。

 そうした苦情が出るのを承知のうえで、今回はこの酒を紹介したい。一部の熱烈なマニアが絶賛する「三芳菊」(みよしきく)である。

 日本酒のボトルとしては確かに艶やかすぎ、ではある。しかし、開栓してひとたび口に含めば、南国のフルーツを思わせるゴージャスな果実香と、グラマラスかつジューシーな甘み(旨み)に「これが本当に日本酒なのか!」と思わずラベルを見直し、既成概念からあなたを解き放つに違いない。

 一度飲んだら決して忘れることのできない、個性際立つ芳醇無比の香味。これこそが「三芳菊」(上写真は「特別純米 無濾過生原酒 阿波山田錦60」)の真骨頂なのである。

 創業は1890(明治22)年。日本三大河川の一つ、四国三郎こと吉野川の上流に位置する阿波池田(徳島県三好市)の地に蔵を構える三芳菊酒造が醸す酒である。

 南に剣山山系、北に阿讃山脈を望む山峡の盆地はかつて煙草の集積地として栄え、また冬場の冷え込みがかなり厳しい寒冷地であったことから酒造りが盛んで“四国の灘”とも呼ばれたという。

 とはいえ、徳島は四国のなかでも酒どころとしてのイメージが最も希薄な県。現在30軒残る醸造所のうち実際に稼動しているのは10軒ほどというから、さもありなんである。“四国の灘”とは、造った酒の大半を灘に桶売りしていた時代の自虐的呼称でもあったのだろうか。

 如何せん、人口が年々減少し過疎化が進む徳島県では、県の清酒生産量の95%が県内に流通するが、県外とりわけ関西産を尊ぶ地域性から徳島県酒のシェアは14%にすぎないという。これでは、全国区レベルの銘酒を輩出する風土が醸成できなかったのも無理はない。

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柳 紀久夫

1956年、東京・神田に生まれる。元「週刊ダイヤモンド」編集委員。大学在学中に日本酒に開眼。以来、酒屋放浪では飽き足らず、日本酒を媒介にしたネットワーク作りや日本酒イベントの発起、取材に便乗しての全国地酒探訪に注力。週末はひたすら極上の日本酒を求めて各地の酒販店・酒蔵を巡る。


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