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金融市場異論百出

米FRBが暗黙のドル安誘導
日本の納税者に移転される負担

加藤 出 [東短リサーチ取締役]
2010年10月27日
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 世界のメディアが通貨戦争過熱への懸念を報じるなか、10月15日のバーナンキFRB議長の講演録には、ドル下落に関する言及がまったくなかった。米国の金融緩和姿勢は、中国の人民元操作に並ぶ現在の通貨戦争の大きな火種だが、彼はその問題に触れず、暗黙のドル安誘導を進めようとしている。

 9月のFOMC議事要旨は、FRB幹部が物価水準目標に関心を持っていることを明らかにした。低インフレやデフレが続くと、物価水準は、望ましいインフレ率が続いていた場合の軌道から下方に乖離する。それを本来の水準に戻そうとする際に国民に目標となる物価水準を示す。そこへ戻る過程で、インフレ率が上ぶれしても許容し、目標が達せられたら金融引き締めを開始して、通常のインフレ率に戻す、という考えである。

 しかし、メルツァー・カーネギーメロン大学教授は、金融引き締めへの転換が必要な経済状態が表れたとき、政府だけでなく多くの経済主体が金利引き上げに強い反発を示すと懸念している(「ウォールストリート・ジャーナル」紙)。

 ポール・クルーグマンは、最近のコラムで次のように述べた。“2000年にローレンス・サマーズは、アジアの人びとに対して、金融危機を避けるためのカギとして、米国のように「十分な資本を持ったよく監督された銀行、実効性のあるコーポレートガバナンス、破産に関する法体系、信頼されうる契約実施手段」が大事だと教えた。しかし、それらのすべてを米国は持っていなかった。現在問題の住宅差し押さえもそうだ。適切な契約書がない、法律知識が低いモーゲージの所有者に、業者が不正な差し押さえを多々行っている”(「ニューヨーク・タイムズ」紙)。

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加藤 出 [東短リサーチ取締役]

東短リサーチ取締役チーフエコノミスト。1988年4月東京短資(株)入社。金融先物、CD、CP、コールなど短期市場のブローカーとエコノミストを 2001年まで兼務。2002年2月より現職。 2002年に米国ニューヨークの大和総研アメリカ、ライトソンICAP(Fedウォッチ・シンクタンク)にて客員研究員。マネーマーケットの現場の視点から各国の金融政策を分析している。2007~2008年度、東京理科大学経営学部非常勤講師。2009年度中央大学商学部兼任講師。著書に「日銀は死んだのか?」(日本経済新聞社、2001年)、「新東京マネーマーケット」(有斐閣、共著、2002年)、「メジャーリーグとだだちゃ豆で読み解く金融市場」(ダイヤモンド社、2004年)、「バーナンキのFRB」(ダイヤモンド社、共著、2006年)。


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