がんの5年生存率の算出には
「がん登録」が必要

 がんについて重視されるデータは、診療上も統計上も「5年生存率」である。

 これは、がんに罹患してから、おおむね、5年目までの生存率の低下がそれ以降と比べて大きいからだ。もちろん、がんの種類によっては、生存率の年次ごとの低下カーブは、早く横ばいになるものもあれば低下し続けるものもあるので5年はあくまで目安に過ぎない。

「生存率」は、「罹患」、「死亡」と並ぶがん統計の三本柱の一つと見なされている。「罹患」(新規患者数)は既存患者数を調べている患者調査(厚生労働省)で類推がきき、「死亡」は人口動態統計(同)で全数把握されているが、「生存率」は、それぞれのがん患者について、がんの罹患を医療機関からの報告で確認し、また罹患後の生死の状況を医療機関からの報告や場合によっては住民票等によって確認する「がん登録事業」によるほかはない。

 先進的な地域ではかなり以前から、「罹患」の毎年の全数把握(患者調査は5年おきの抽出調査なので地域統計として限界がある)と「生存率」の算出のため、「地域がん登録事業」が実施されてきた。県レベルでは大阪府や宮城県が先進地域として知られる。

 その後、地域がん登録事業の実施地域は増加してきたが、全国レベルでのがん登録が課題として意識されるようになり、2013年の末に成立した法律に基づいて、2016年1月より全国がん登録が開始された。5年生存率の算出には、診断後、5年を経過する必要があるので、正確な生存確認に基づく5年生存率が全国がん登録により算出されるのはこれから5年後以降となる。

 もっとも、すでに多くの都道府県で地域がん登録事業が実施されてきており、得られている各地域のデータ品質を評価して合算集計が可能だと判定された21府県約64万人の集計値が全国データとして国立がん研究センターから7月に公表され、新聞等でも報道された。