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三谷流構造的やわらか発想法

なぜ災害経験者ほど避難勧告を無視するのか

過去の災害から学ぶべきこと

三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]
【第145講】 2016年8月18日
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F小学校、「水害」避難所開設!

 2007年9月6日夜、自宅の電話が鳴りました。私がPTA会長を務めていた、世田谷区立F小学校からです。校長先生が緊張感を含んだ声で私に伝えます。

 「台風に備えて、われわれは学校に泊まり込みますので」

東京を直撃するコースに乗った台風9号が、まさにそこまで迫ってきていました。

 F町は多摩川のお膝元。普段から流量は豊かなのですが、年に一、二度は大きく増水し中洲が水没するほどになります。実際、1974年には数キロ上流の狛江市で堤防が決壊し、民家19戸が流出してもいます。 

〔出所:狛江市HP

 将来的には、もっと桁違いに大きな水害も起こりえます。国土交通省は多摩川下流において「200年に1回程度起こる大雨で洪水が発生し堤防が決壊した場合、氾濫が想定される面積は約9000ha、被害額は約10兆2000億円」と推定しています。

 間違うなかれ、200年後、ではありません。200年に一度程度、です。一生の間にこの壊滅的水害に遭う確率は1/3以上です。

 川沿いの住人にとって「水害」は遠いどこかの話ではなく、「そこにある危機」なのです。

 この日の雨は関東山間部で夜通し降り続き、急流である多摩川の水位は即座に上昇しました。あっという間に何十面もの野球場、サッカー場、テニスコートが濁流の下に消え、憩いの場である小高い丘も、大部分が水没しました。

 ついに翌朝7日の午前5時、F小学校に避難所が開設され、6時20分には地元住民1500人に対して、避難勧告が発令されました。

 この時の最高水位は8.6メートル。堤防越水まであと90cmでした。決壊すれば付近の水深は2~5メートルに達します。

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三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]

1964年大阪生まれ、福井育ち。小1のとき読書と読みかじりを人に教える快感に目覚め、駿台予備校では教えることの技術に衝撃を受ける。東京大学 理学部物理学科卒業後19年半、BCG、アクセンチュアで戦略コンサルタントとして働く。2003年から06年までアクセンチュア 戦略グループ統括。途中、INSEADでMBA修了。
2006年から教育の世界に転じ、社会人教育と同時に、子どもたち・親たち・教員向けの授業や講演に全国を飛び回る。「決める力」「発想力」と「生きる力」をテーマに毎年8000人以上と接している。現在K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院 主任教授(MBAプログラム)の他に、早稲田大学ビジネススクール、グロービス経営大学院、女子栄養大学で客員教授、放課後NPO アフタースクール及びNPO法人 3keys 理事を務める。永平寺ふるさと大使。
著書多数。『一瞬で大切なことを伝える技術』(かんき出版)は啓文堂書店2012ビジネス書大賞、『経営戦略全史』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はダイヤモンドHBRベスト経営書2013第1位、ビジネス書大賞2014大賞、『ビジネスモデル全史』(同)はHBRベスト経営書2014第1位となった。
HPは www.mitani3.com

 

 


三谷流構造的やわらか発想法

発想法ってなんのために存在するのでしょう? ヒトと違うアイデアや答えを出すためです。統計的に有意な戦略なんて、定義により無価値ですし、統計的に正しい発想法なんてあるわけがありません。発想に「普遍性」や「高確率」を求めるなんてそもそも矛盾しているのです。発想法も、然り。これまでと違うものを生み出すには、新しい発想法がいま求められているのです。

「三谷流構造的やわらか発想法」

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