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三谷流構造的やわらか発想法

「高潮」は津波と同じ、来てからでは遅い
~スーパー台風に向けてフィリピンからの教訓

三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]
【第97講】 2014年10月16日
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スーパー台風による
高さ7mの高潮が8000人の命を奪った

 2013年の11月8日、フィリピンのレイテ島タクロバンを「スーパー台風(*1)」ハイエン(*2)が襲いました。秒速65mもの強風によってほとんどの家屋が破壊され、1200万人が被災しました。しかしその8000人ともいわれる死者・行方不明者のほとんどは、「高潮(storm surge)」によるものでした。

出所「Eyewitness footage of Typhoon Haiyan washing house away」YouTube

 その前日、アキノ大統領は確かに「最大6mに達する高潮が来る可能性がある」と国民に向かって警告を発していました。「繰り返して言うが、これはかなり危険だ」と。

 しかし気象当局によるその警告は、行政や住民自身を大きく動かすことはありませんでした。スーパー台風ハイエンの威力はあまりに凄まじく、そして誰も高潮の危険さ、その破壊力を理解しなかったからです。いや、言葉すら、知りませんでした。

 高潮は特殊な気象用語として「storm surge」と伝えられ、その意味を把握する者はいませんでした。そして、避難の仕方もわからず、8000人が命を落としました。

高潮とは何なのか?
「吹き寄せ効果」と「吸い上げ効果」

 われわれ日本人だって同じです。高潮という言葉だけはよく知っていても、そして、日本国史上最悪の伊勢湾台風被害が高潮によってもたらされたと、仮に知っていても、そこまでです。その意味や構造を説明できるひとはほとんどいないでしょう。

 高潮とは何で、そして、高潮は何故に恐ろしいのでしょうか。

*1 スーパー台風とは、これまでの分類を超える規模の台風をいう。最大風速が秒速54mを超えるものが「猛烈な台風」であるのに対し、秒速67m(130ノット)を超えるものが「スーパー台風」とされる。
*2 Haiyanは気象庁がリストに従って付けるアジア名のひとつで、中国語でウミツバメの意味。日本名は台風30号、現地名はYolanda。

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三谷宏治 [K.I.T.虎ノ門大学院主任教授]

1964年大阪生まれ、福井育ち。小1のとき読書と読みかじりを人に教える快感に目覚め、駿台予備校では教えることの技術に衝撃を受ける。東京大学 理学部物理学科卒業後19年半、BCG、アクセンチュアで戦略コンサルタントとして働く。2003年から06年までアクセンチュア 戦略グループ統括。途中、INSEADでMBA修了。
2006年から教育の世界に転じ、社会人教育と同時に、子どもたち・親たち・教員向けの授業や講演に全国を飛び回る。「決める力」「発想力」と「生きる力」をテーマに毎年8000人以上と接している。現在K.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院 主任教授(MBAプログラム)の他に、早稲田大学ビジネススクール、グロービス経営大学院、女子栄養大学で客員教授、放課後NPO アフタースクール及びNPO法人 3keys 理事を務める。永平寺ふるさと大使。
著書多数。『一瞬で大切なことを伝える技術』(かんき出版)は啓文堂書店2012ビジネス書大賞、『経営戦略全史』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)はダイヤモンドHBRベスト経営書2013第1位、ビジネス書大賞2014大賞、『ビジネスモデル全史』(同)はHBRベスト経営書2014第1位となった。
HPは www.mitani3.com

 

 


三谷流構造的やわらか発想法

発想法ってなんのために存在するのでしょう? ヒトと違うアイデアや答えを出すためです。統計的に有意な戦略なんて、定義により無価値ですし、統計的に正しい発想法なんてあるわけがありません。発想に「普遍性」や「高確率」を求めるなんてそもそも矛盾しているのです。発想法も、然り。これまでと違うものを生み出すには、新しい発想法がいま求められているのです。

「三谷流構造的やわらか発想法」

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