残業ゼロがすべてを解決する
【第18回】 2017年1月5日 小山 昇

創業181年の老舗で
成功した残業削減の仕組み

電通過労自殺事件で強制捜査が入ったいま、中小企業も大企業もお役所も「残業ゼロ」に無関心ではいられない。
小池都知事が「夜8時には完全退庁を目指す」、日本電産の永守社長が「2020年までに社員の残業をゼロにする」など、行政も企業も「残業ゼロ」への動きが急加速中!
株式会社武蔵野は、数十年前、「超ブラック企業」だった。それが日本で初めて日本経営品質賞を2度受賞後、残業改革で「超ホワイト企業」に変身した。
たった2年強で平均残業時間「56.9%減」、1.5億円もの人件費を削減しながら「過去最高益」を更新。しかも、2015年度新卒採用の25人は、いまだ誰も辞めていない。
人を大切にしながら、社員の生産性を劇的に上げ、残業を一気に減らし、過去最高益を更新。なぜ、そんな魔法のようなことが可能なのか?
『残業ゼロがすべてを解決する』の著者・小山昇社長に、「創業181年の老舗で成功した残業削減の仕組み」について語ってもらおう。

労組と協力し、
残業時間をどう調整したか?

小山昇(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。『1日36万円のかばん持ち』 『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』 『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』 『強い会社の教科書』 (以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】http://www.m-keiei.jp/

 サンケイ化学株式会社(鹿児島県/農薬類の製造)は、1918年に創業した農薬専門メーカーです。サンケイ化学も、1年間の労働時間を調整して、残業を減らす努力を続けています。

「当社には、30年以上前から労働組合があります。5年前に、工場のある社員の残業時間が36協定(月45時間、年間360時間以内の残業)をオーバーして労組が問題視したことがありました。
 そこで、労使が協力して残業時間を減らす取り組みを本格化させました。まず、同業他社が「特別条項付き36協定届」を提出していることを聞き、当社もマネをした。その結果、『月80時間以内』まで残業ができる月を設定できたので、36協定オーバーを解消することができました」(福谷明社長)

 特別条項付き36協定が認められても、年間360時間以内に抑えなければいけません。
 そこで福谷社長は、年間の残業時間を調整しやすくするために、年間の締月を「3月から10月に変更」し、残業の多い社員を閑散期に残業させないようにした。

「忙しい月を最後に持ってくると、360時間をオーバーしてしまいますが、閑散期を最後に持ってくれば、早帰りがしやすくなるので、基準の360時間をなんとかクリアできます」(福谷社長)

 その他、「毎月、個人別の残業時間の集計表を総務で作成して、残業の多い社員には改善の指示を出す」「残業届に、上司にわかるように仕事の内容をはっきり書く」など、指ン導を徹底した結果、残業時間は順調に削減されています。

「ある社員は、月に26時間の残業をしていましたが、今では、『月に0.8時間』にまで減りました。残業届に仕事内容を書かせたら、ピタッと残業がなくなった。ということは、今まで、仕事がないのにダラダラ残っていたことになります。そのことに気がつかなかった社長(私)のマヌケさを思い知らされました」(福谷社長)

創業181年の老舗で
成功した残業削減のコツ

 古川紙工株式会社(岐阜県/美濃和紙の加工)は、オリジナルの紙製品の製造販売とOEM供給を行う会社です。創業181年。古川慎人社長は8代目です。

 古川社長は、伝統を継承することのメリットを感じつつも、事業自体に行き詰まり感を覚えていました。
 同じやり方を続けていると、発想が浮かばなくなってくる。それに、人が定着しません。

「会社に伝統はあったものの、社員を定着させる仕組みがなかったのです。私自身、前職はサラリーマンで、経営者の体験もありません。だから、なんやかんやとごまかしながら、社員を説得していました。でも、そのやり方で社員を止めておけるのは、せいぜい3~4年です。その後は多くの社員が辞めていきました」(古川社長)

 社員が辞めた理由のひとつは、古川社長が若者のトレンドを見誤っていたことです。

「自分ががんばれば、社員も遅くまでがんばってくれると思っていましたが、それは私の思い違いでした。社長の仕事は、社員と一緒になってがんばることではなく、残業や休日出勤を減らす仕組みをつくることだったのです。
 そのことに気づいて、まず、水曜日をノー残業デーにし、土日出勤を禁止にした。『終わりの時間』も決めて、幹部社員も夜8時に会社を出ています。どうしても残業が発生するときは、残業申請書の提出を義務づけています。
毎週月曜早朝の幹部会議は、仕事の進捗状況をチェックし、『どうすれば残業を減らすことができるか』を確認し、共有しています」(古川社長)

 残業時間が減って、「新卒採用時に会社のイメージアップにつながった」と言います。

「当社は、デザイナーの採用が多いが、一般的に、『デザイナーの仕事は夜遅くまで働くのが当たり前』と思われています。
 若手デザイナーが、有名デザイン事務所に就職した大学時代の同級生から『終電で帰るのが当たり前な大手デザイン会社より、小さくてもいいから残業が少ない会社に就職すればよかった』と言われたそうです。
 長時間働いたほうが実力がつくという考えがある一方で、これからの時代は、『短い時間で、チームとして実績を挙げていく』という能力が求められている気がします」(古川社長)

 福谷社長も古川社長も、業界の常識や伝統にとらわれず、「これまでとは違う考え方」「これまでとは違うやり方」に目を向けた。だからこそ、「残業が少ない会社」「人が辞めない会社」に変わることができたのです。

小山昇(Noboru Koyama)
株式会社武蔵野代表取締役社長。1948年山梨県生まれ。日本で初めて「日本経営品質賞」を2回受賞(2000年度、2010年度)。2004年からスタートした、3日で108万円の現場研修(=1日36万円の「かばん持ち」)が年々話題となり、現在、70人・1年待ちの人気プログラムとなっている。『1日36万円のかばん持ち』 『【決定版】朝一番の掃除で、あなたの会社が儲かる!』 『朝30分の掃除から儲かる会社に変わる』 『強い会社の教科書』 (以上、ダイヤモンド社)などベスト&ロングセラー多数。
【ホームページ】http://www.m-keiei.jp/