官僚「天下り」にはまだまだ“抜け穴”がある

「お前ら全員クビだ」と
怒鳴った財務省出身の総理秘書官

 文部科学省が元高等教育局長の早稲田大への天下りを斡旋したとの問題が出ている。この件で、前川喜平文科事務次官が引責辞任した。

 早稲田大学では、鎌田薫学長が、20日記者会見を開いて、「再就職等規制に関する本学の理解が不足していた」と謝罪した。早稲田大学に再就職していた元高等教育局長の吉田大輔教授は辞職した。

 表向きの報道は多くない。アメリカのトランプ大統領の就任式と重なったため、テレビなどの露出もそれほどでもない。ただし、“霞が関”の関心はきわめて高くなっている。

 20日、安倍総理は山本幸三行政改革相に対し、全省庁を対象にした実態調査を行うように指示した。そして、安倍首相が国会で、天下りを根絶すると答弁した。文科事務次官が一瞬でクビにされたわけで、各省庁は震え上がっている。

 安倍総理は、実は「天下り問題」をかねてより問題視していた。時は、10年前の第一次安倍政権にさかのぼる。

 筆者は官邸で内閣参事官をしていた。内々に、当時の安倍総理から「天下りの根絶を含む公務員制度改革を作ってくれ」と言われ、経済財政諮問会議で議論していた。そのときの官僚の抵抗はすさまじかった。

 当時の官僚トップだった的場順三内閣官房副長官(財務省OB)は、内閣府職員から天下り斡旋の禁止を盛り込んだ経済財政諮問会議の民間議員ペーパーの事前説明を受けると、机を叩いて激怒した。そして、「欧米とは事情が違う。欧米には、再就職斡旋の慣行がないなんて言うな」と言いい、「欧米には再就職斡旋の慣行がない」というペーパーの注記を削除した。注記は正しいにもかかわらず、削除されたのだ。