世界25カ国で刊行され、日本でも16万部を超える大ベストセラーとなった『FREE』。著者のクリス・アンダーソン氏は、企業や個人にとっての21世紀の主戦場は、非貨幣経済で得た信用や評判をいかに金銭に転換できるかにあると見る。週刊ダイヤモンド3月13日号『FREE』特集から貴重なインタビューを先行公開する!

クリス・アンダーソンクリス・アンダーソン
(Chris Anderson)
世界的な科学雑誌の「Nature(ネイチャー)」や「Science(サイエンス)」、英国の高級紙「The Economist(エコノミスト)」などを経て、2001年に米「WIRED(ワイヤード)」誌の編集長に就任。2006年に刊行した著書『ロングテール――「売れない商品」を宝の山に変える新戦略』(早川書房)に続き、昨年出版した『FREE フリー <無料>からお金を生み出す新戦略』(NHK出版)も世界的なベストセラーとなる。ジョージ・ワシントン大学で物理学の学位、カリフォルニア大学バークレー校で量子力学と科学ジャーナリズムを専攻。ロスアラモス国立研究所で調査員を務めた経験もある。
Photo by Rick English

―著書『FREE』は、ハードカバー版の発売とほぼ同時にインターネット上で無料配布されたことで、「フリーミアム」(一部の有料顧客が他の顧客の無料分を負担するモデル。フリーとプレミアムを合わせた造語)の実践として注目された。何か新しい発見はあったか?

 正直に話すと、今回は実験方法でやや欲張りすぎて、(読者の)混乱を招いたという点が発見だろうか。

 1週間限定のダウンロード、5週間限定の電子書籍リーダー向けの無料閲覧、また音声ファイルのみのオーディオブックの期間無制限の無料公開など多様な実験方法を取った。その結果、読者からは「なぜもうダウンロードできないのか」「PC画面で閲覧しかできないのか」といった批判を受けた。次に実験するならば、方法を絞り込み、(流通を)能動的にコントロールできるかたちで、顧客に明確なエクスペリエンス(体験)を提示できるようにしたいと思う。

―『FREE』で伝えたかったことを改めて要約すると?

 タイトルだけで判断して本を手に取らなかったり、読み飛ばした人ほど誤解しているようなので、その誤解を解くために改めて強調すれば、すべてが無料になるとか、無料になるべきだと主張したかったわけではない。製品がデジタル化されれば、“無料”が市場における価格設定のひとつになると言いたかった。

 無料という価格設定は、あなたやあなたの会社がやらなくても、他の誰かがやるだろう。遅かれ早かれ、「フリーミアム」モデルで売ることを誰もが余儀なくされるのだ。

―「フリーミアム」モデルにおける有料ユーザーと無料ユーザーの比率は5対95というのが定説だ。どうすれば5%のユーザーに気持ちよくお金を出させることが可能になるのだろうか。