「ミクロ経済学」をマンガとシニカルな笑い、そして画期的な構成で学べるようにした『この世で一番おもしろいミクロ経済学』。この一見ふざけたようで、しかしグレゴリー・マンキューやノーベル経済学賞受賞者も絶賛する「お笑いと経済学を両立」させた本は、いかにして生まれ、なぜおもしろくなりえたのか。本書を翻訳した山形浩生さんの「訳者解説」を引用しながら、著者ヨラム・バウマン、そして本書の核となる部分に斬り込む。(構成:編集部 廣畑達也)
YouTubeが生んだ自称「お笑い経済学者」バウマン、
パロった相手(マンキュー)に認められて世界に名を轟かす
ヨラム・バウマン。経済学の博士号を持ち、温暖化対策で最近出番の多い「環境経済学」を専門とする経済学者だ。
だが彼には、そんなマジメなイメージとはかけ離れたもう一つの「顔」がある。長々と説明するかわりに、山形浩生さんのキレのいいご指摘を引用しよう。
世界で唯一無二の経済学コメディアン(Stand-Up Economist)として活躍しており、冗談と経済学をからめることで経済学教育の建て直しもやりたいんだとか。
そう、彼は「お笑い経済学者」(ただしあくまでも自称)でもあるのだ。
なんでまたそんなおかしな異名を(自分で)つけてしまったのか。
それにはまず、世界でも有数の売れ部数を誇る経済学教科書の著者でハーバード大学経済学部教授、グレゴリー・マンキューをめぐる「運命」と、YouTubeが果たした画期的な役割を語らねばならない。
まずは、この動画を見てほしい(音量にご注意を)。
これは、大胆にもマンキューの「経済学の10大原理」をパロった、バウマンの原点とも言える「経済学ネタ」だ(ここではそれに日本語字幕をつけたものを引用している)。会場にいる人々がまさに「爆笑」している様子からも、ネタのウケ具合が伝わると思う。
この動画が、バウマンの「運命」を大きく変える。YouTubeにアップされるやいなや世界中の経済学者から爆笑と話題をかっさらい、瞬く間に名を轟かせていったのだ。
さらに事態は大きく加速する。このネタを見たマンキュー自身が絶賛したのだ。こうして御大のお墨付きを頂戴したバウマンは、「お笑い経済学者」として今も活躍中、というわけだ(※1)。やはり大胆にもマンキューの推薦コメントを頂戴している本書『この世で一番おもしろいミクロ経済学』も、この動画がきっかけで生まれたともいえるだろう。当然ながらマンキューは本書にも以下のような推薦コメントを寄せてべた褒めだ。
「経済学の勉強は楽しくなくちゃ。バウマンとクラインはそれを見事に実現した!」
※1 以下のバウマンのホームページ参照。
http://www.standupeconomist.com/
なお上記サイトにある他のネタ動画についても、いくつか日本語字幕をつけて公開する予定です。