最近の長期金利(10年国債の利回り)上昇について懸念する声が出ている。さらには、黒田緩和は円安、株高には成功したが、長期金利上昇を招き景気に悪影響が出かねない、財政にも支障が出かねない、ひいては財政破綻まであるのでは、という論調まで一部には出ているようだ。

長期金利上昇に伴う3つの懸念

 まず事実を整理しておこう。過去10年間の大きな流れを見ると、小泉時代の量的緩和はそれなりに景気の上向きに貢献したので、2006年3月の量的緩和解除まで、景気の上昇とともに、長期金利も上昇し、0.5%程度から2%程度へと上昇している。その後、金融引き締めで景気も後退し、それとともに長期金利も低下し0.5%程度になっている。

 最近1年間を見ると、長期金利は0.8%程度であったが、今年初めころからアベノミクスで日銀が大量に買い入れたことによって債券価格が上昇(長期金利が低下)したが、4月の黒田緩和で打ち止め感が出て、15日、0.9%台までに上昇した。長期金利の動向については、日本相互証券のデータを参照。

 長期金利は、長い目で見れば、かなり名目GDP成長率と似たような数字になることが知られている。同時に今後の短期金利の将来にわたる平均値になるので、将来の動向にも左右される。さらに、市場の需給関係にも短期的な動きが左右される。現在の長期金利は史上最低水準なので、将来の景気好転などの見通しや需給関係により、いつなんどき反発しても不思議でなかった。

 なお、長期金利は変動するもので、日本の過去1年間を見ると0.4%から0.9%程度までと変動幅は0.5%ポイントであるが、アメリカでは10年国債の利回りは1.3%から2.1%程度までと変動幅は0.8%ポイントである。日本が転換期であることを考えれば、変動幅がとくに大きいというわけでない。