東京オリンピックの
経済効果は3兆円?

 2020年の東京オリンピック開催が決まり、最も流布する経済効果は招致委員会が発表した直接的需要増加額1.2兆円、経済効果(生産誘発額)約3兆円である。一方、民間の試算は千差万別で、果ては150兆円までと広きにわたる。

 こうした試算は多かれ少なかれ、公共投資を行うときのような乗数効果を勘案したものだ。ここでは、こうした試算を正面から議論するのは趣旨でない。本論は、東京オリンピックの開催は当初の想定以上の効果があること、日本の置かれた環境にとって極めてタイミングが良く、脱「失われた20年」の効果があることを、次の5要因にまとめて考える。

第1要因:
2013年はバランスシート調整
3要素が揃う初の局面

 次の図表は、筆者が用いてきたバブル崩壊以降のバランスシート調整の概念図であり、その脱却に向けた基本形は次の3原則、すなわち、①過剰債務の肩代わり、②債務処理原資確保(多くの場合は自国通貨切り下げ)、③先行き期待改善である。

 筆者は今年を、1990年代以降、初めて以上の3条件が揃うタイミングとし、その結果、今年は脱「失われた20年」の第一歩とした。今回の東京オリンピック開催決定は、その3原則のなかで、③先行き期待改善にさらなる大きなサポートになると考える。