なぜ、資金の流れが
変わらないのか?
「貸出拡大の実感がない」
「アベノミクスは経済に効いていないのではないか」
これは、筆者がいくつかの金融機関現場を訪問させていただいた際に、必ず受ける見方である。
日銀統計上、銀行貸出は今年10月、前年同期比2.3%(貸出預金動向)まで上昇している。確かに、大・中堅企業は伸びが確認され、業種別には金融、不動産、通信インフラ分野で増加している。
しかし、中小企業は依然前年比マイナスであり、不動産分野くらいしか伸びていない。しかも、企業の資金需要が弱いことを反映し、その需給関係から貸出金利は低下が続き、おおむね史上最低水準だ。
長期金利が半年ぶりの水準まで低下したのは、株式の上昇など先行き期待は改善しても、貸出需要が乏しく、結局金融機関が国債に資金を戻さざるをえなくなったことを受けたものだ。こうした動きは今年度中、続くのではないか。
日銀は「異次元の金融緩和」で貸出拡大を狙い、金融機関も貸出拡大を狙ってはいるものの、企業が動かない限り貸出需要は生じない。次ページの図表1は、1990年代以降、バブル崩壊後の個別企業の生き残りをかけた財務戦略が、貸出・投資の低迷と賃金の低下、デフレ状況を招いたことを示す概念図だ。