世の中では、赤字と騒ぐと大きな関心を集める。大企業が赤字だとニュースになる。そして、タイトルの経常収支赤字(これは貿易赤字でもいい)や財政赤字も同じくニュースになる。

 8月6日、2014年1~6月は5075億円の経常収支赤字で、初の赤字だとニュースになった。財政赤字もいつもニュースになっている。

 多くの人は、赤字=悪と条件反射する。企業や個人の赤字はその前提でもあまり問題ないだろう。しかし、国の経常収支赤字や財政赤字となると、そうでもない。むしろ問題はどこまで赤字でも大丈夫かというサステイナビリティがポイントである。

経常収支=国の「収益」ではない

 経常収支赤字の場合、そもそも国の「収益」とは無関係だ。経常収支赤字がマクロ経済にとって「それほど問題なのか」と問われると、経済学の観点からは、かなり疑問になる。経常収支赤字をある程度続けても、経済成長に支障ない国はたくさんある。経常収支と経済成長には何の関係もない。経常収支赤字になると金利が高騰するという人もいるが、データで見れば、経常収支と金利も無関係だ。これらは、2012年2月23日付け本コラム「日本の貿易収支が赤字転落で本当に国債は暴落するのか」にデータを含めて書いてあるので、参照していただきたい。

 とはいっても、経常収支赤字が「永遠」に続くと問題になるだろう。というのは、経常収支赤字は、国際収支会計上の定義といっても同じであるが、国の対外資産を減少させるからだ。もっとも、日本の対外純資産は300兆円なので、仮に5兆円の経常収支赤字でも純債務国になるまで60年かかる。10兆円の経常収支赤字でも30年だ。こうした長期になると予測するのが馬鹿馬鹿しくなる。その間に「想定外」のことが起こるからだ。

経常収支と金利は無関係

 経常収支赤字と財政赤字は一緒に話題になることもある。これは理由がある。会計上の定義でもあるが、IS(投資・貯蓄)バランス論がある。民間部門の貯蓄超過が政府の財政赤字と経常収支黒字の合計に事後的に等しくなるというものだ。直感的にいえば、国民の貯蓄は、政府への貸付と海外への貸付にまわっているといえる。

 たとえば、アメリカのいわゆる双子の赤字だ。国民の貯蓄が少ないので、海外からの借入(経常収支赤字)で、政府への貸付(財政赤字)を賄っているという状態だ。もっとも、ISバランス論は会計上の事後恒等式であり、その間の因果関係をいうものではない。このため、経常収支赤字であるからといっても、それが財政赤字をもたらすものではない。まして、国際収支のリファイナンスに問題がなければ、金利の話にはならない。それが、上に述べた経常収支と金利は無関係だという事実に呼応している。