東京圏高齢者の
「移住」は暴論か?

 有識者らでつくる民間研究機関「日本創生会議」の提言が、また物議をかもしている。

 同会議は昨年5月、少子化の進展により「2040年には全国で896の市区町村が“消滅可能性都市”になる」と発表して、大きな話題を呼んだ。

ibataオウチーノ代表取締役社長 兼 CEO
井端純一
いばた・じゅんいち/同志社大学文学部新聞学(現メディア学)専攻卒。リクルートを経て、『週刊CHINTAI』『ZAGAT SURVEY』取締役編集長などを歴任。2003年、オウチーノを設立。著書に『広報・PR・パブリシティ』(電通)、『30年後に絶対後悔しない中古マンションの選び方』『10年後に絶対後悔しない中古一戸建ての選び方』(河出書房新社)など。

 続いて今年6月、東京圏(1都3県)では75歳以上の後期高齢者が急増し深刻な医療・介護サービス不足が起きるとして、「高齢者の地方移住」を提言した。

 10年後、東京圏では75歳以上の人口が約572万人になる。必要と予測されるベッド数46万に対し、現在のベッド数は33万しかなく、13万床も不足する。

 従来、東京圏では都内23区のベッド数不足を多摩や神奈川、埼玉、千葉など周辺エリアが補ってきた。この先は周辺エリアでも爆発的にお年寄りが増えるため、全てのエリアでベッド数不足となる見込みなのだ。

「だから早めに地方移住を」という理屈を聞いた瞬間、私は「棄民政策か?」と思った。

 現在、東京圏では20年の東京オリンピック開催に向け、インフラ整備が進むとともに、都心部のマンション価格が上昇して、買える人と買えない人の格差が拡大している。景気よく高級マンションが売れている一方、東京都における65歳以上単身者の借家率は、45.4%である。

 富裕層は都心に超高層マンションを買って住む。要介護になっても最高級の介護サービスを受けられる。低所得者はそうはいかないのが実情だ。