新年早々、中東で大きな問題が起こっている。「スンニ派の盟主」を自任するサウジアラビアが、シーア派の大国イランとの国交を断絶したのだ。中東への関心が薄い日本人には「唐突に起こった」ように思える両国の対立。しかし、紛争の原因は5年前の米国の「ある重大な決断」にある。
サウジとイランの諍いの最中に
米国は対イラン制裁の解除に動いた
中東情勢が不安定さを増している。サウジアラビアとイランの国交断絶は、両国だけでなく、地域全体を巻き込んだ戦争に発展する可能性が指摘されている。
まず両国の間で「何が起こったのか」を把握しておこう。サウジアラビア政府は1月2日、「テロに関与した」容疑で、シーア派の指導者ニムル師を処刑した。ニムル師は2011年、スンニ派国家サウジにあるシーア派への差別撤廃を求める反政府デモを支持。12年6月に逮捕され、14年10月、「宗派間の対立を煽った」として死刑判決を受けた。
シーア派国家イランの首都・テヘランでは同日、ニムル師の処刑に激怒した民衆が、サウジ大使館を攻撃。イラン最高指導者のハメネイ師は、群衆に自制を求めるどころか、「サウジの政治家には間違いなく神の報復が降りかかる」と発言し、火に油を注いだ。
この事件を受けて、サウジアラビアは1月3日、「イランとの国交を断絶する」と発表。さらにサウジは1月7日、内戦が続くイエメンのイラン大使館を空爆したとされる(サウジ自身は、否定している)。ここまででも十分、「平和ボケ」している我々日本人には驚きだ。しかし、もっと驚きなのは、米国の反応だった。
1月6日付、読売新聞から。(太字筆者、以下同じ)
<米国務省のカービー報道官は4日の記者会見で「我々はこの問題の仲介者になろうとしているかと問われれば、答えはノーだ」と述べた。>
なんという軽さだろう。中東最大の親米国家サウジアラビアを助ける気は、まったくないらしい。さらに、1月6日、サウジをさらなる衝撃が襲う。サウジとイランの対立にもかかわらず、米国は「対イラン制裁を解除する」というのだ。
<対イラン制裁、数日で解除…米国務長官が見通し
読売新聞 1月8日(金)11時48分配信
【ワシントン=大木聖馬】ケリー米国務長官は7日、イランのザリフ外相と電話会談し、昨年7月の核合意の履行状況などについて意見交換した。
ケリー氏は同日の記者会見で、欧米による対イラン制裁の解除について「すべてがうまく行けば、我々は数日のところにいる」と述べ、近く解除されるとの見通しを示した。>
いったい、何が起こっているのだろう?ブッシュの時代であれば、米国は必ずサウジに味方し、「イランと戦争するいい口実だ!」と歓喜したことだろう。実際ブッシュは、常にイラン攻撃の口実を探していた。何かが大きく変わっている。一体、何が?