グローバル化と情報化の進展、そして環境意識の高まりと消費市場の成熟。難しいかじ取りが求められる経営環境のなかで、ロジスティクスをどう位置づけるのか、その戦略的アプローチが企業の優勝劣敗の鍵を握る。今、求められる“物流革新”とは?

 

 物流サービスの高付加価値化を積極的に展開する物流事業者が見られるなかで、製造業などの荷主企業側には、“部分最適”から“全体最適”へのマネジメント視点の転換が求められている――。

 経営革新に直結する物流・ロジスティクス戦略として、今、何が必要なのか、公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会の徳田雅人専務理事に聞いた。

「グローバル化」と「環境」は
すべての企業の最重要課題

 2年に1度開催されるアジア最大級の物流・ロジスティクス専門展示会「国際物流総合展2010」が9月14日から4日間、東京ビッグサイトで開催される(次ページコラム参照)。9回目となる今回の重点テーマは「環境調和」と「グローバリゼーション」。

公益社団法人 日本ロジスティクスシステム協会専務理事 徳田雅人氏

 主催者の中心となっている公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会では、業界を含む産業界全体の重要課題として、グローバル化の拡大、環境負荷軽減の推進、コンプライアンスの確保、人材・労働環境変化への対応を掲げ、ロジスティクスの変革を通じて企業の競争力強化と企業価値の向上を図るべきだと提言する。

 同協会の専務理事で、業界の動向にも詳しい徳田雅人氏は、今、国際物流総合展が注目されている理由をこう語る。

「グローバル化対応と環境対応は、物流・ロジスティクス業界のみならず、現在多くの企業が抱える最重要課題でもあります。前回を上回る400社以上もの企業の参加は、その課題を解決するソリューションへのニーズの高まりを反映してます」

物流業界は荷主企業とともに
グローバル化を目指す

 原材料の調達や生産のみならず、市場としても急拡大するアジアを中心とした海外で、今後、日本企業が持続的に発展していくためには、物流・ロジスティクスの面で、よりいっそうの高度化・効率化が求められると徳田氏は強調する。

「効率的なグローバルサプライチェーンを実現するためには、ITを活用して全世界の生産や在庫の状況を可視化し、変化に即応するシステムと体制を構築することが不可欠です。通関や保険なども含めた円滑な輸出入業務の重要性も、これまで以上に高まっています。シームレスなロジスティクスを実現することが、日本企業の国際競争力の鍵を握っているといってもいいでしょう」

 グローバル化の流れを受けて、物流・ロジスティクス業界も戦略の転換を進めている。すでに業界のトップ企業は、アジアに進出を果たしている。

「サードパーティロジスティクス(3PL)への流れの加速、荷主企業の海外進出への対応などによって、ロジスティクス業界自体が変化してきています。これまでのような〝待ち〟の姿勢ではなく、グローバルソリューションを提案する〝攻め〟の姿勢にならなければ生き残ることはできません」(徳田氏)