「この際、1度民主党にまかせてみるか」
東京都議会選挙での民主党の圧勝ぶりと自民党の惨敗ぶりを見て、「もはや政権交代は必至」の報道が乱れ飛ぶなか、このように考え始めている人は少なくないはずだ。
しかし、民主党の政策を分析してきた筆者にしてみると、もしこのような「民主党にまかせてみる」という発想があるとすれば、それこそ民主党が何たるかをまったくわかっていないことの証左だ。表層的なメディア報道に惑わされ、きちんと民主党の政策を把握しておかないと、そういうことになる。
冷戦構造と高度経済成長を前提とする自民党政治は、「おまかせ政治」でよかった。時代は、できるだけ政治が余計なことをしないよう要請していたし、実際、霞が関官僚に任せておけば、社会はちゃんと回り、われわれの生活は豊かになった。しかし、すべての前提だった冷戦構造と高度成長が終わり、そのおまかせ政治が立ち行かなくなった。
そこで民主党政権の登場か──となるわけだが、民主党が主張する政治、そして実行を約束している政策は、いずれも市民が意思決定に参加することを前提とした、「参加する政治」だ。「引き受ける政治」と言い換えてもいい。
民主党の政策は、自民党時代のように市民から国の統治を丸投げなどされては困ると明確に語っている。だから、民主党の政策には2言目にはディスクロージャーやオープンの文言が出てくるのだ。
実は次期総選挙における最大のポイントが、「まかせる政治から引き受ける政治への転換」の是非なのである。そのことを踏まえずして、いったい政治の何を見ているのかというのが、筆者の偽らざる感想である。そして、それを踏まえずに下手に民主党を支持などすると、大変なことになることもあらかじめ覚悟しておく必要があるだろう。
筆者は1996年の旧民主党の結党時から、民主党が打ち出す政策に強い関心を持ち、その遷移を取材してきた。このたびその成果を『民主党が約束する99の政策で日本はどう変わるか?』という1冊の本にまとめた。
同書の目的は第一義的には、民主党政権ができたときに、どのような政策が実施され、その結果日本がどのように変わるのかを、あらかじめ有権者に示しておくことにある。それが見えなければ、有権者は民主党政権が何をしようとしているのかを知らないまま、「政権交代」という漠然としたイメージに1票を入れてしまう可能性がある。