「最近、NHKをつけると画面の右側に『アナログ』っていう字が薄く出るでしょ? あれは最近、スマップの人が宣伝している、何とかっていう難しい話と関係があるのかしら……。テレビだけが楽しみなのに、なんだか不安だわね~」

 9月上旬、会社員のAさんが遅い夏休みを取って実家に帰省した際、75歳になる1人暮らしの母親がこうつぶやいた。

 これは、2011年7月24日に全国の放送網がアナログ放送から地上デジタル放送へと完全移行することを受け、まる3年後に迫った今年7月24日から、NHKと民放127社がテレビ画面の端に「アナログ」というロゴマークを表示したことによる。

 新聞各紙の広告欄やNHK総合テレビで、この表示について「お知らせ」はあったものの、それに気づかないうちに表示が始まったという人も少なくないだろう。

 最近、以前にも増してよく耳にするようになった「地上デジタル放送(地デジ)」という言葉。そもそも地デジとは何なのか? 

アナログ停波の認知が9割超と
総務省は胸を張るが・・・

 総務省のホームページを見ると「従来のアナログ方式と比べて、より高品質な映像と音声を受信することができる新たな放送」とある。

 2003年12月に東京都、大阪市、名古屋市の一部のNHK・民放系列局で放送が開始され、2006年からは、すでに全都道府県にわたる一部の地域に放送範囲が広がっている。

 政府は、地デジへの完全移行までの3年間を「最終段階の中でも『仕上げ』の段階」と位置づけている。そのため、3年を切った今夏は、SMAPの草彅剛さんをテレビCMに起用して頻繁にPRさせたのだ。

 その甲斐あってか、「アナログ放送が終了する(アナログ停波)ことを知っている人は92.2%に上った」と総務省は胸を張る。

 実際、数年前に行なわれた総務省のアンケート調査では認知率が10%にも届かない状況だっただけに、「ここに来て地デジの認知率は急上昇している」と言えるだろう。

 しかし、ただ知っていればよいというものではない。「具体的に私たちは何をどうすべきなのか? 政府の対策は?」と言えば、これが一向に視聴者へ伝わってこないのだ。

 電子情報技術産業協会のデータによると、「地デジ対応テレビ」は今年3月時点で約2200万世帯に普及している。だが、全国には約5000万の世帯があり、1世帯当たりのテレビ所有台数は2.5台というから、一般家庭のアナログテレビは実に膨大な数に上る。