『gururin』
『gururin』(ぐるりん)システムの概念図。ザッピングをしつつ、興味のある情報は「深堀り」も可能だ。

 電通と、連想検索エンジン「reflexa」などを手掛けるプリファードインフラストラクチャーが、このほどユニークなサイトの実験版を公開した。ウェブサイトをザッピング閲覧できる『gururin』がそれだ。

「ザッピング」とは、テレビ視聴の際に、チャンネルを頻繁に切り替える行為のこと。リモコンの登場により一般化した視聴スタイルだが、それがウェブブラウジングでも可能になったということなのだろうか。さっそく試してみた。

 まず、ログイン後に目に入るのは、「グルリンシナリオ」というリスト。これは、注目の話題や人気サイトの情報を自動収集したものと、ユーザーによるサイトのレコメンド情報を基に構築されている。

 1日に作成されるリストは朝昼の2回分(2010年2月現在)。リストは日付け別に並んでおり、それらに加えて「特集」と銘打たれたリストも存在する。

 好きなリストを選んだら、画面上部に設置された「オートプレイ」ボタンを押す。すると一定時間をおいてから、次々に別のサイトへと遷移していく。この「ザッピング」の感覚は、確かにこれまでのウェブ閲覧にはなかったものである。その新しさはどこにあるのだろうか。

 「従来、情報を取得する際には、キーワード入力による能動的な検索が一般的でした。しかしそれでは、ユーザーの持つ知識や関心を超えた情報を入手することは困難です。『gururin』の場合、注目すべき情報をザッピングとして提供しますので、ユーザーは自身が“思いもよらなかった情報”に出会うことが可能となります」(電通デジタル・ビジネス局の吉羽一高氏)

 つまり同サービスは、「キーワード入力が必要ない検索エンジン」というわけである。検索エンジンを利用する場合、ユーザーは最低限「キーワード」を知っておく必要がある。逆に言えば、キーワードを知らなければ(あるいは絞り込めなければ)、何も情報を得られないということだ。

 たとえば、「バンクーバーオリンピック」に関する最新トピックを閲覧しようとする。しかし「バンクーバーオリンピック」というキーワードだけで検索すると、その結果は膨大なものになる。かといって、さらにキーワードを絞り込むことも難しいという場合も多い。

 そんなときに、『gururin』のリストの中から「特集:バンクーバー2010」を選択してみると、公式サイトを筆頭に、Wikipediaや企業の応援サイト、選手のブログなど、様々なページに飛ぶことができる。その中から、自分の興味に引っかかったサイトをじっくり閲覧すればよい。

 さらに活用したいのが、「深堀り」という機能である。これは自分の興味に合致したサイトに関連の深いサイトを、さらに掘り下げて紹介してくれる機能だ。

 たとえば、あるクロスカントリー選手のブログを掘り下げてみると、次々に同種目の他の選手のブログにたどり着くことができた。名前も知らない選手の情報を見つけ出すのは、通常の検索では至難の業である。それだけにこの“発見”は、今までにはないウェブの新しい可能性を感じさせるものといえる。

 現在は試験運営の段階だが、テストユーザーには「募集人数の4倍ほどのご応募を頂いております」(同氏)という。ネットの“ながら見”と“キーワード不要の検索エンジン”という2つの新機軸を打ち出した『gururin』。今後の展開に注目したい。

(中島 駆)