2009年は新聞社が内包する危機が顕在化した1年だった。部数と広告収入が減少し、新聞社が販売店に架空の部数を押し付ける“押し紙”も批判された。激動のメディアの行く末を人気小説家とジャーナリストに聞いた。
激動のメディアの行く末を、小説家の真山 仁(写真左)とジャーナリストの上杉 隆(写真右)が語り合った。 Photo by Masato Kato |
─2009年11月に、毎日新聞社が共同通信社から記事の配信を受けるなど包括提携すると発表しました。全国にあまねく人員を配置してきた新聞社のモデルの修正かと注目されました。
真山:大きな一歩であるとともに、あと一歩英断を期待したいですね。
すなわち毎日新聞が全国の支局をなくすなど、大胆なリストラを進めることができれば、毎日の紙面は独自色のあるおもしろいものになるかもしれない。大きなチャンスです。
上杉:日本の新聞記者が自分が何十年間もやっている仕事が、じつは新聞記者の仕事じゃないという認識をまず持つべきでしょう。
自分の人生を否定するようで大変だとは思いますが。
─世界の新聞社とどこが違うのでしょうか?
上杉:日本の新聞記者の仕事の大半は外国では通信記者の仕事、いわゆるワイヤーサービスの仕事で、それは、速報性と正確さが求められます。
一方、新聞記者は事件や現象をさまざまな角度から分析し、関係者への取材を重ねたうえで、ある程度書き手の意思を反映させて記事にします。だからこそ署名記事にもなる。
海外では新聞社と通信社は明確に分けられています。
真山:「週刊ダイヤモンド」で新聞の経営を題材とした小説『ザ・メディア』を連載していることもあって、「新聞社の成功モデルは何でしょうか? ネットでしょうか? 紙でしょうか?」とよく聞かれる。
それには「優秀な記者にいい記事を書いてもらうことに尽きる」と答えています。
ネットが原因で新聞離れが起こったというのは言い訳にすぎない。どこにもない魅力的なコンテンツには、人はいくらでも対価を払う。
どこも同じような記事を出しているから、価値が低くなる。