国内携帯端末業界では、7月に日本上陸が決まった米アップルの携帯電話「iPhone(アイフォーン)」の話題で持ち切りだ。アイフォーンは、年内までに日本を含めた70ヵ国以上で販売され、2008年の販売目標を1000万台に据えている。

 「アイフォーンは、未来の情報端末の基本形になる」(電機メーカー幹部)と評価する声が上がる一方で、「一機種で100万台も売れれば大ヒット。アイフォーンが成功したとしても、せいぜいその程度なのでは」(通信事業者幹部)と冷静に見る向きもあり、日本市場でどの程度普及するかは未知数だ。

 そんななかで、「話題先行型のアイフォーンよりも、本当に要注意なのは、ノキア(フィンランド)の動向」と電機メーカー幹部は警戒する。世界の携帯端末市場の4割のシェアを握る、最大手ノキアが今年に入って、「日本市場のシェアを(現在の1%程度から)10%へ引き上げる。1000億円規模の販売促進費の投下を惜しまない」(ノキア関係者)と、日本市場“拡充”の方針を鮮明にしているのだ。

 世界の携帯端末市場は11.4億台。そのうち、日本市場は5167万台で5%にも満たない。その小さな市場に国内メーカーが群がっている。消耗戦に耐え切れず、これまでに三菱電機と三洋電機が事業撤退を決めたが、いまだ9社の国内メーカーがひしめき合う。

 約4億台の販売台数を誇るノキアにとってみれば、日本市場など無視してもよさそうなものだが、競合メーカー幹部は「日本だけに普及した高機能端末が、世界で当たり前となり、日本市場が異質な市場ではなくなったうえ、国内メーカーの弱体化が目立ち始めたため」と、その理由を推測する。

 二艘の“黒船”は、国内携帯端末メーカーの事業撤退・再編を加速することになるだろう。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 浅島亮子)