電力会社が、“新エネ”導入包囲網にいらだちを強めている。
きっかけは6月8日、経済産業省の外郭団体、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が発表した、技術開発指針「2030年に向けた太陽光発電ロードマップ(PV2030+)」だ。
昨年、資源エネルギー庁は、30年までに最大5321万キロワットの太陽光発電を導入する計画を立てたが、NEDOの「PV2030+」は、一歩踏み込んだかたちだ。50年には、一次エネルギー需要の5~10%を太陽光で賄おう、というのだ。07年度の一次エネルギーに占める新エネルギー全体の割合3.1%と比べれば、そのハードルの高さがわかる。
だが、原子力などを基幹電源とする日本の電力会社にとって、太陽光発電は厄介者だ。まず、政府の導入促進策にのっとり、太陽光発電の余剰電力をたとえ不要でも高い価格で買い取らねばならない。
また、太陽光など不安定電源の導入量が増えると、大きく2つの系統問題が生じる。第1に、需給バランスが崩れるため、蓄電池などバックアップ電源が必要になる。第2に、電力品質が不安定になるため、従来どおり100ボルトの電圧を維持するには、配電線を強化せねばならない。
さらに、系統整備で双方向への電気のやりとりが可能になれば、利用の多い昼間は電気料金を高く、利用の少ない夜は安く設定することも可能になる。そうした“節電効果”は、電力会社にとって受け入れがたい。
とはいえ、昨今の国を挙げた“新エネ”ブームには、電力会社も抗し切れなかった。
電気事業連合会は今年2月、ある研究会で「30年の手前であれば、現状の系統設備で2800万キロワットまでは太陽光を受け入れ可能」と太陽光受容の発言をした。逆に「それ以上なら、4.6兆円の投資が必要」と警戒してもみせた。そんな投資は身の丈に合わず、国の負担は避けられないとも言いたげだ。
既得権益への執着は、環境対策でも屈強だ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 柴田むつみ)