【第21回】 2009年08月06日
パニック障害と「ウツ」――“いま”を生きづらい現代人への警鐘
――「うつ」にまつわる誤解 その(21)
突然、強い不安とともに動悸や息苦しさ、冷汗、吐気などの発作(パニック発作)におそわれるパニック障害は、現代において「うつ」と同様、多くの方々が悩んでいる問題です。
初めてパニック発作におそわれた人は、身体的な問題ではないかと考えて内科などを受診することが多いのですが、検査を行なっても特にその原因と思われるような異常は見つかりません。
新しいタイプの「うつ」では、このパニック障害との境界線はかなり曖昧で、両者が合併していると診断されるケースもあれば、パニック障害から始まって後に「うつ」が徐々に現われてくるケースもあります。
今回は、このパニック障害という病態について掘り下げて考えてみたいと思います。
「死ぬかもしれない」不安は、なぜ起こるのか?
パニック障害は従来「不安神経症」と呼ばれていたもので、その特徴である発作(パニック発作)は、もともと「不安発作」と呼ばれていました。このことからもわかるように、パニック障害は強烈な不安を伴っているところが最大の特徴です。
この不安は「このまま死ぬかもしれない」と感じられるようなものであることが多く、それがあまりに強烈であったために、予期不安と呼ばれる「またいつ発作が起こるかわからない」という心配におびえ、生活にもさまざまな支障を来たすようになります。
それにしても、なぜ「死ぬかもしれない」といった不安が、わざわざ自分の内部から起こってくるのでしょうか。
第4回で「病というものは、何らかのメッセージを自分自身に伝えるべく内側から湧き起こってくるものである」、あるいは「病は、その中核的な症状によって、自分自身をより自然で望ましい状態に導こうとしている」という見方で「うつ」について考察しましたが、ここでもその考え方を用いてみましょう。すると奇妙なことに、「死ぬかもしれない」と自分自身に思わせることにパニック障害の意味がある、という話になってしまいます。
さて、これはいったいどういうことでしょうか。
“メメント・モリ”――死を忘れるな
古いラテン語の格言に、“メメント・モリ(memento mori.)”というものがありますが、これは「死を忘れるな」「死を想え」という意味の言葉です。
同じことを、古代ローマの哲人皇帝マルクス・アウレリウスも、次のように述べています。「一万年も生き永らえるであろう者のように振る舞うな。(死の)運命はすでに迫っている」(『自省録』鈴木照雄訳、講談社学術文庫)
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著者プロフィール
- 泉谷閑示
(精神科医)
1962年秋田県生まれ。東北大学医学部卒。東京医科歯科大学医学部付属病院医員、(財)神経研究所付属晴和病院医員、新宿サザンスクエアクリニック院長等を経て、現在、精神療法を専門とする泉谷クリニック院長。著書に『「普通がいい」という病』(講談社現代新書)と最新刊の『「私」を生きるための言葉』(研究社)がある。
「泉谷クリニック」ホームページ
この連載について
いまや8人に1人がかかっているといわれる現代病「うつ」。これだけ蔓延しているにもかかわらず、この病気に対する誤解はまだまだ多い。多数の患者と向き合ってきた精神科医が、その誤解を1つずつひも解いていく。
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