【第1回】 2008年07月08日
北朝鮮テロ指定解除で「拉致問題」はむしろ解決へと前進した
北朝鮮に対して、米国が「テロ支援国家指定解除」の手続きに入ることを決めた。これによって、「北朝鮮による日本人拉致問題」の解決が遠のくと懸念されている。米国が経済制裁の根拠となる「敵国通商法」の北朝鮮への適用を除外し、日本政府も一部経済制裁を解除することで、「拉致問題」解決のための重要な外交カードがなくなるからだ。そして、「6ヵ国協議」のメンバーである中国・ロシア・韓国も「拉致問題」への関心を失うだろうという悲観的な見方がされている。
しかし、私は米国の「テロ支援国家指定解除」が行われた時こそ、むしろ「拉致問題」は解決に向けて進展する可能性があると思う。
日本国内で「拉致問題」に関して悲観的な見解が広がるのは、北朝鮮への「制裁」が「拉致問題解決のための外交カード」だと見なされているからである。しかし、6ヵ国協議のメンバーやその他欧州などを含めた国際社会全体から北朝鮮問題を見た場合、逆に「拉致問題」は「ならずもの国家・北朝鮮を制裁するためのカード」の1つだと考えられている。
国際社会にとっては、「拉致問題」よりも、シリアなど中東諸国への核兵器の拡散に関与するような「ならずもの国家・北朝鮮」をどう抑え込むかが、第一の関心事である。そして、そのために必要な外交カードとして、「資金洗浄問題」や「核開発問題」、そして「拉致問題」などがあるとされているのだ。
外交カードとしての
「拉致問題」の重要性は増す
「テロ支援国家指定解除」が行われるとしても、北朝鮮が急に「ならずもの国家」でなくなるわけではない。国際社会はこれからも北朝鮮を牽制し、その行動を管理するためのカードを必要としている。そして「拉致問題」は、「金融制裁」が解除され、「テロ支援国家指定」が解除された後、数少なくなった対北朝鮮牽制カードの1つとして、国際社会からますます重要視されることになるのだ。
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著者プロフィール
- 上久保誠人
(早稲田大学グローバルCOEプログラム客員助教)
1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文 タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。
この連載について
「大物政治家に話を聞いた」「消息通に話を聞いた」といった大手マスコミ政治部の取材手法とは異なり、一般に公開された情報のみを用いて、気鋭の研究者が国内・国際政局を分析する。
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