先月30日、今年のプロ野球「ドラフト会議」が終わった。
昨年のように中田翔、佐藤由規、唐川侑己ら甲子園を沸かせたスター候補生はいない。話題といえば、「メジャーに挑戦するから指名しないで欲しい」と各球団に要望書を送った社会人ナンバーワン投手・田沢純一を強行指名するチームがあるかどうか、ということぐらいだった。しかし結局、それもなし。ルールに従い淡々と行なわれ、淡々と終わった印象がある。
だが、今回のドラフトで注目すべき点はあった。もう1つのドラフトといえる「育成ドラフト」で指名された選手が急増したのだ。この制度が始まったのは2005年。このとき、育成選手を獲得したのは4球団で6人に過ぎなかった。翌06年には5球団12人、07年には8球団15人と徐々に増えていったが、今年は8球団が25人の育成選手の獲得に名乗りを上げた。一気に増えたのである。
ところでこの『育成選手制度』。その意味やルール、設立の背景などは野球ファンにも意外と知られていないようなので、ここで簡単に解説しておこう。
「1球団70人まで」の規制はそのままに
新たに生まれた『育成選手制度』
日本のプロ野球には「支配下登録選手70人枠」がある。試合に出場できる選手、つまりプロとして契約する人数を1球団70人までとする規則だ。
この規則があるのは戦力均衡化のためだ。もし人数枠がなければ、資金力のある球団は多くの選手を抱え込むだろう。選手層が厚くなることはもちろんチーム内の競争は激しくなり、強化は進むはずである。
しかし、資金的に余裕のない球団は、これまで通り、ギリギリの人数でチームを構成せざるを得ない。そうなれば資金力のあるチームとないチームでは実力差は開く一方になる。別の見方をすれば、戦力均衡に名を借りた資金力の乏しい球団救済、12球団による2リーグ制維持の方策といえる。
支配下登録選手の人数制限の是非は以前から議論されてきた。撤廃か、維持かである。
撤廃派の主張はこうだ。人数制限があるため、広く人材を集めることができず、埋もれた才能を掘り起こす機会が限られてしまう。また、プロは優勝劣敗の競争社会だが、人数枠に守られている分、厳しさに欠け、野球界全体のレベルアップを妨げているというものだ。