ギグエコノミーの拡大で、これまで以上に自由な働き方ができているようにも見える。しかし、それが必ずしも、女性のキャリアにプラスをもたらしたとは言えない。なぜなら、フリーランスだからこそ柔軟な対応を要求されるものの、女性は子どもの世話や親の介護などを一手に任されることが多く、その期待に応えられないからだ。本記事では、舞台関係者への調査を通して、この事実を明らかにする。


 女性がリーダーの役割につくことを阻む壁については、これまで数多くの研究が発表されてきた。しかも、この壁は簡単になくならない。現に、リーダーに占める女性の割合の増加率はずっと1桁にとどまっている。働く時間が長かったり、スケジュールが予測不可能であったりする分野や、仕事のスケジュールを自分でコントロールできない分野、あるいは出張で飛び回る必要のある分野では、女性リーダーの占める割合がとりわけ低い。

 1つの大きな理由は、多くの女性が家族の世話をする第一人者だからだ。たとえば、母親が育児に費やす時間(週平均15時間)は、父親の育児時間(週平均7時間)の2倍以上だ。また一部の女性は(そして一部の男性も)、子どもの世話にとどまらない責務を果たしている。老いた親の介護など、何時間も付き添いを要する家族の世話もしているのだ。

 いつ、あるいは何時間仕事をすることになるかわからなければ、子どもや老親の世話を頼む手はずを整えるのは難しい。住み込みのベビーシッターを雇う余裕などない女性が大半だろう。あるいは、突然仕事を頼まれたときに、代わりに家族の世話をできるくらいパートナーが柔軟な働き方をしているケースなど、ほとんどないだろう。

 こうしたすべてが、キャリアアップの過程でとてつもない壁となる。乗り越えがたいと感じるのは、正規雇用の会社員ではない働き手(増加の一途をたどっているフリーランスやコンサルタントなど)も、新規ビジネスの開拓を期待されている社員(いわゆる「レインメーカー」)も、同じだろう。彼らはいつでも「オン」状態であることが期待されており、請け負った単発の仕事をこなしながら、将来の収入をいかに稼ぐかについて算段を立てている。

 生活上と仕事上の要求をさばきながら、いったいどうすれば、キャリアアップを図る余裕など生まれるのか。