消費者向けドローンの世界最大手である中国のDJIは、驚くべき急成長を遂げている企業の一つである。いまや、全世界で70%の市場シェアを誇るまでになった。同社をはじめ、多くの中国企業がグローバルに成功を収めている要因をひも解くと、そこには3つの優位性があると筆者らは言う。


 2006年、26歳のフランク・ワン(汪滔)は、香港科技大学の寮の部屋でDJIという会社を立ち上げた。

 伝えられる話によると、学業で成績優秀だった彼に、父が褒美として高価なリモートコントロール式のヘリコプターを買い与えた。だが、そのヘリコプターが予想通りすぐに壊れると、ワンはもっとよいコントローラーをつくろうと決意するに至ったという。彼は卒業論文の一環として、電子式の飛行コントローラーを完成させた。ドローン技術の必須要素である。

 今日、中国の深センを拠点とするDJIは、全世界の一般消費者向けドローン市場で70%のシェアを誇る(本稿著者の1人、ジエ・ガン〈甘潔〉は同社の取締役会メンバーである)。そして同社は、今後の競争に関するヒントを、中国の地から世に示している。

 欧米のメディアはこれまで、中国の奇跡に対して、かなり懐疑的であった。技術的に欧米と大きな開きがあり、追いつくには長い時間がかかる、というのが一般的な論調だ。だがDJIは、中国が模倣屋からハイテク・イノベーションの担い手へと変貌している証である。

 DJIの売上高は、2017年には約27億ドル。2013年~2017年には、年間100%を超える複利成長率を遂げている。地域別の収益源は、中国、米国、欧州から30%ずつ、南米から10%。評価額は100億ドルを上回り、ワンは株式の45%を保有しているので、世界初のドローン長者だ。

 一般消費者向けドローン市場には、シリコンバレーの資金潤沢な新興企業数社――GoPro(ゴープロ)、3Dロボティクスリリーなど――が参入したが、撤退している。これらの企業は、DJIに機能面でも価格面でも太刀打ちできなかった。これは、中国の高価値で模倣が困難な競争優位性によるものだ。

 DJIは、深センという製造エコシステムから恩恵を受け、ドローンを非常に低コストで製造している。2016年時点で、DJIは研究開発の人材を1500人擁している。全社員4000人の約40%だ。これは、低コストの技術系人材を活用できる会社にのみ許される贅沢である。DJIの最初のヒット商品は、2013年のファントムだが、以降は新製品を矢継ぎ早に世に送り出している。

 DJIの例が示すように、中国企業は、高価値で模倣が困難な3つの優位性に基づいて、イノベーションにいそしんでいる。これらの優位性により、欧米の競合他社と巧みに渡り合うばかりか、分野によっては凌駕することもできるだろう。