いま、有能なリーダーたちが大企業をどんどん辞めている。この数年でギグエコノミーという現象が注目を浴び始めているように、フリーランスという働き方は珍しいものではなくなった。彼らはなぜ、仕事のやりがいもあり、その成果が世の中に与えるインパクトも大きい場所をみずから去り、「ソロプレナー」として独立起業する道を選ぶのだろうか。


 大企業各社は、人材こそ社の最も大切な宝だと口をそろえる。しかし、どこを見ても有能なリーダーが大会社を辞めていく。

 ある上級マーケターは、独立して自分のために株式のオプション取引を行うために、3億ドル規模のブランドのマーケティングに見切りをつけて退社した。別の上級マーケターは、数十億ドルの価値があるポートフォリオを手掛けるチャンスに背を向け、小さなスタートアップのCEOになった。ある戦略エグゼクティブは、数十億ドル規模の上場企業を後にして独立し、フリーのコンサルタントに戻った。

 私たちが見聞きした実話に加え、データの裏づけもある。マッキンゼーの調査によると、フォーチュン500企業のエグゼクティブの中で、自社が高パフォーマンスの人材を十分保持できていると考える人は、わずか7%である。

 コンファレンスボード(全米産業審議会)は、今後数年で欧州と米国における高スキル労働者が1800万人ほど足りなくなるとしている。興味深いことに、自営業者に技術的ソリューションを提供するMBOパートナーズは、独立して単独で会社を経営するソロプレナーの数を、やはり約1800万人と特定している。

 共著Niche Down(未訳)の執筆にあたり、クリストファーとヘザー・クランシーは、ソロプレナー数十人にインタビューを行った。

 着目すべきは、彼らはパフォーマンスが劣っているせいでクビになり、必要に迫られて自分で事業を興したわけではないことだ。むしろ、その逆である。全員が極めて高いパフォーマンスを上げていながら、あえて大企業でのキャリアアップに背を向けていた。自分ならではの力を発揮できる、意義あるニッチを発見し、特定の大企業の制約の外で働くことに、より大きな利点を見出したのである。

 彼らはその価値を実現するために、筆者らの呼ぶところの「個人上場」を果たした。オーナーは単一(上司、会社)ではなく複数いて、自分たちのスキルはより高い評価を受ける。このようなソロプレナーになることで、より自律し、より多くの収入と自由な時間を手に入れたのである。