人材採用の基準は、あいまいだ。「何となく合わない」という理由で落とされることもある。だが、求める条件に当てはまる能力を有し、人格的にも申し分ない人材を、過去の選定パターンに当てはまらないからといって排除しているとしたら、それはもったいない。筆者は、採用候補者を適切な基準で評価するための3つの質問を提示する。


 エンジニアリング部の部長が満足していないことは、その口調ですぐにわかった。私に不平をぶちまけんばかりだ。彼はアナンドという採用候補者の面接を終えたばかりだった。アナンドは私が紹介した人物で、アナンド自身は電話で「受かると思う」と話していた。

 ほんの数分前、アナンドは電話をくれて、面接はうまくいったと熱く語っていたのだ。面接はほぼ丸一日に及び、会社中のいろいろなリーダーに会い、最後にエンジニアリング部の部長に会ったという。

 私は同社の新しい「プラットフォーム」戦略の構築を支援したことがあったので、その仕事にふさわしい候補者を探していた。そして、アナンドが適任だと考えたのだ。

 ところが、部長とアナンドは面接について著しく異なる報告を寄こしてきた。アナンドいわく、通常よりもはるかに多くの質問を投げかけ、戦略の詳細や具体的な情報を聞けたので、会社が取り組んでいる挑戦の複雑さを理解できたという。彼は、面接した人すべてと前向きで洞察に富んだ会話ができたと感じていた。

 かたや部長は、アナンドの質問が「非常にうっとうしかった」と私に訴えた。

 完璧に条件を満たした候補者について、リーダーが「フィットしない」と言うのを私が聞いたのは初めてではない。候補者が特定のパターンに当てはまらず、振るい落とされてしまうことは非常に多い。ある調査によると、履歴書の75%は採用管理システムを通過することができないという。

 この問題について部長と話を掘り下げるうちに、わかってきた。彼はアナンドが適切なスキルと経験を持っているとは思ったものの、質問に苛立ちを覚えた。「チームが答えられないような質問を山ほどされた」と言う。アナンドへの「フィットしない」という評価は、実際には「自分が不愉快な思いをしたくない」という意味だったのだ。

 イノベーションは、わからない状態が続いて新たに学習することで生じる。答えがわかっていない状態を許容しなければ、新しいものを生み出せるはずがない。そして、未来は創造ではなく協創、つまり協力してつくるものだ。リーダーは、「正しい問いの定義」と「新しい答えの発見」の両方ができるチームを構築する必要がある。

 部長はアナンドの質問を不快に思うよりも、それを歓迎し、さらにアナンドにも問いかけるべきだったのだ。それこそが面接の価値というものである。

 雇用主は候補者のスキルや適切な経験について知ろうとする。そして優秀な候補者は、雇用主への質問を通じて、職務内容や上司、会社について知り、自分に合っている仕事かどうかを評価するのだ。

 部長が投げかけるべきだった何種類かの質問を、以下に挙げたい。最適な候補者を、誤った基準で振るい落とさないためにすべき質問だ。