-
Xでシェア
-
Facebookでシェア
-
LINEでシェア
-
LinkedInでシェア
-
記事をクリップ
-
記事を印刷
ビジネスの世界では常に成果が問われるが、自分さえよければ構わないという考え方では、自分もチームもうまくいかない。むしろ他人の感情に共鳴し理解する「共感」を示すことは、さまざまな効果を生み出す。その重要性を理解して、共感の文化が定着するよう努力している経営者もいるが、なかなか機能していないのが現実だ。筆者は、職場に共感を根づかせる3つの方法を示す。
アップルのティム・クックCEOは、2017年にマサチューセッツ工科大学(MIT)の卒業式でスピーチをしたとき、次のような警告をした。「仕事で共感なんて抱くなと、みんなが言うだろう。でも、そんな嘘っぱちの常識を信じてはいけない」
職場における「共感」(人の感情に共鳴し理解する能力)の重要性を認識して、強調する企業経営者は、クックだけではない。2017年当時、米国で管理職向けの共感研修を行っている企業は20%にすぎなかった。だが最近、CEO150人に聞いた調査では、80%以上が共感を成功のカギだと考えていた。
クックをはじめとするリーダーが言わんとすることは、研究によっても裏づけられている。共感豊かな職場は、強力なコラボレーションが生まれやすく、ストレスが少なく、社員の士気も高い傾向があり、レイオフなどの困難な出来事から立ち直るスピードも速い。
だが、多くのリーダーは、努力こそしているものの、自社の文化に思いやりという要素を加えることに苦労している。それどころか、経営幹部が構築したい文化と、実際の文化との間にギャップが生じていることが多い。
たとえば、企業文化が攻撃的で競争的と定義される会社があるとしよう。CEOも経営幹部も、これではまずいとわかっているから、慌てて共感を自社の企業価値の新たなカギに位置づける。
会社のためによかれと思って取った措置だが、これは社員が目指すべき場所を変更することになり、組織の「理想」(人々がどう行動するべきかという指令)と、組織の「社会規範」(ほとんどのメンバーの実際の行動)の間にギャップを生み出す。
CEOは、これによって社内に意欲的なムードが生まれると期待するかもしれないが、実際は正反対であることを証拠は示している。理想と規範が衝突すると、人は命じられたことではなく、周囲の人がやることに流されていく。もっと悪いことに、それまでの文化を忠実に守っていた社員は裏切られたと感じたり、経営幹部は偽善的だとか、現実をわかっていないと思ったりする可能性がある。
幸い、社会規範に抵抗するのではなく、それを活用して企業文化を変える方法がある。
私が著書The War for Kindness(未訳)で述べているように、人は周囲の粗悪な行動に流されるだけでなく、思いやりがある生産的な規範にも引かれるものだ。たとえば、誰かが選挙に行ったり、省エネに努めたり、慈善活動に寄付したりするのを見ると、自分もやってみようと思う可能性が高い。
私の研究では、共感は人から人へと広がりやすいこともわかった。つまり、思いやりや利他主義は「人にうつる」のだ。リーダーたちがこのインサイトを活用して、職場に共感を生み出す方法をいくつか紹介しよう。