スマートフォンの普及により、現代人は情報の洪水に飲み込まれている。気がつくとついスマホを触ってしまい、仕事が手につかない人は多いだろう。注意散漫だと生産性が低下する事実を示す研究は多い。一方で、注意散漫な状態だからこそ創造性が高まることを指摘する研究もある。筆者は、アテンション・エコノミーで生産性と創造性を両立する方法を提示する。


 従業員の気を散らせるデジタル情報の猛威が、企業に大きな損害を与えている。

 オンライン教育プラットフォームのユーデミー(Udemy)が行った最新調査によれば、デジタル情報過多が引き起こす注意散漫が、ミレニアル世代とZ世代の働き手にとって、とりわけ大きな問題となっている。この世代の36%が「個人的な活動のためにスマートフォンを見る」ことに、平日2時間以上を費やしていると答えている。

 この調査では、さまざまな気の散る要因に時間を取られるために、働き手は「ストレスを感じ、モチベーションが下がり、自分自身や自分の仕事、キャリアについて自信を失う」ことが判明している。一方で、気の散る要因を減らすことに成功した人の4人に3人は、生産性が上がったと答えている。

 似たような研究報告は山のようにあり、今回の調査結果もその最新版にすぎない。これまでのHBRの記事でも、「デジタル情報過多は、今日の職場の最大の問題かもしれない」とし、「スマホが近くにあるだけで労働者のパフォーマンスが下がる」と述べている。

 したがって、職場における注意散漫要因を減らす対策が必要なことは疑いようがない。ひっきりなしに画面にポップアップする通知もその一つだ。

 しかし、この問題に取り組む企業は、ジレンマに直面することになる。注意散漫には、プラスの効果も望めるのだ。創造性を高めることが証明されているのである。ノースウェスタン大学の研究に関する記事の見出しが、それを見事に言い得ている。「注意散漫はひらめきをもたらす」のである。

 この研究では、以下のことが明らかになった。「注意散漫は、創造的認知において、コストとベネフィットの両方をもたらすことがある。ノイズなど周囲からの刺激は、創造的な人々にとっては気が散る要因であり、仕事上のミスを誘うおそれがある。しかし同時に、注意散漫は、注意の外にあるアイデアを現在の情報処理作業に取り入れることに役立ち、独創的思考をもたらす可能性がある」

 私は自分でこの問題と格闘してみて、集中と創造性の両方を高める方法があることに気づいた。ただし、努力が必要である。

 数年前、私は職業人として危機にあった。どのプロジェクトも前に進まない。生産性も創造性も急落した。

 私は気を散らす要因の依存症状に陥っていたことに気づいた。ほとんど常にインターネットかスマホを見ていて、プライベートにも仕事にも役に立たないコンテンツを不必要に消費していたのだった。

 私は、皮肉を感じずにはいられなかった。デジタルアナリストとしてキャリアを積んできた私は、アプリやソーシャルメディアがとりわけ依存性を高めるように設計されていることを、よく知っている。

 人の行動に即座に影響を与える方法は2つ、行動を操るか刺激するかのどちらかである。テクノロジー企業はほとんどの場合、操るほうを選んできた。アテンション・エコノミー(関心経済)が大きな利益を上げることに、多くの人々が気づいたのだ。

 私は、自分がこれほど簡単に、術中にはまるとは思わなかった。そこで、自分自身とコンサルティング先の企業に役立つ解決策を探すことにした。