ビジネスパーソンとしての満足感や充実感を得るためには、仕事の内容に焦点が当てられることが多い。だが、「何」をやるかが重視される一方、「誰」とやるかに目が向けられる機会は少ない。実際には、ふだんどんな人と関わっているのかは、仕事の内容と同等あるいはそれ以上に、個人の幸福感を左右する可能性がある。本記事では、あなたにとって意味ある人間関係を構築するうえで必要なことが示される。


 充実した仕事人生を送るための秘訣とは、何だろうか。ほとんどのアドバイスは、仕事にパーパス(意義)や満足を見出すことにフォーカスしている。いい会社に就職して、やりがいのある仕事ができたらそれで幸せになれる、という。

 ところが、さまざまな業界や企業で調査を行ってみると、仕事に対する満足度を高めると我々が思っていることは、どうやら間違っているらしいことがわかった。「何」を重視しすぎるあまり、大切にすべき「誰」が見過ごされているのだ。

 業界や立場の異なる160人にインタビューを実施したところ、仕事がうまくいっているかどうかは、仕事そのものと同じくらい、リレーションシップ(仕事上・仕事以外両方での人との関わり)がものを言うことに、幾度となく気づかされた。自分の成長の糧となる人間関係に積極的に時間や労力を投じ、パーパスを持つようになると、仕事が地味できついと感じている人でも、楽しくてやりがいがあると感じている人に劣らぬ満足度や充実感を得られる可能性がある。

 リレーションシップの重要性は、調査によって裏付けられている。複数の研究が示しているように、人とのつながりは、職場でパーパスやウェルビーイングを育む中心的役割を果たしている。企業の業績も左右する。組織内の効果的な社会資本マネジメントは、学びや知識共有を促進し、従業員の離職燃え尽きを減らし、エンゲージメントを高め、イノベーションに火をつけ、社員や組織のパフォーマンスを向上する。

 我々コネクテッドコモンズは、仕事での成功と人的ネットワークとの関係を探る研究プロジェクトの一環として、リレーションシップによって仕事や生活がどのように変わったかを、数百人にヒアリングした。その中で特に私の印象に残ったのが、IT企業のシニアエグゼクティブ、ゲイルから聞いた話だった。

 彼女は、仕事のストレスなどが原因で1ヵ月半入院したとき、ターニングポイントを迎えた。教会で一緒になった友人から掛けられた、優しい一言で目が覚めたのだ。「人生には、もっと大事なものがあるでしょ」

 現代の多くの働き手がそうであるように、ゲイルも燃え尽きていた。克服する道は、公私のリレーションシップの優先順位を見直し、時間の使い方を意識して配分するしかないと気づいた。

 ゲイルは現在、毎週月曜日に部下と1時間かけて1ヵ月分の予定をチェックするようにしている。「人・意義・情熱に沿わない予定は変更します。優先順位や、24時間の1時間1時間をどう使いたいかは、はっきりしています」

 彼女は仕事で多忙な日々を送っているにもかかわらず、プライベートでも自分自身のことや、自分にとって大事なことを確認するために、家族や教会の仲間ともつながりを強める努力をしている。夫婦でも、自分たちが本当に大切な人やことに時間を費やしているかどうかを定期的に見直している。

 ゲイルは、時間を意識的に管理し、大切なリレーションシップを積極的に育むことを通して、プライベートでも仕事でも、より満足したバランスの取れた日々を送れるようになったと感じている。以来、彼女は昇進も3回した。