次に「誰に」のほうからまとめたのが、次の表です。最も多かったのが上司や部下、経営陣に対して読ませたいという回答でした。例えば、自分の会社の社長には、知の探索・知の深化の理論やセンスメイキング理論を知ってもらいたい。対して部下には、弱いつながりの強さの理論が必要だと。当然ながら、自分の会社に関係する人たちに、この理論をよく知ってほしいということを示しています。

勉強会参加者に「誰に」「どの理論」を読ませたいかを尋ねた。 拡大画像表示

 また、家族に読ませたいという回答が思ったよりも集まりました。例えば、4歳の娘さんに「意思決定の理論」を読んでもらいたいというのは意外でした。特定の有名経営者を名指しして「この理論を読んでもらいたい」という回答もありましたが、コメントしにくい人もいますね(笑)。

 ほかにも、地方の首長や政治家、MBAの学生等、様々な方が挙がりました。この本は色々な使い方があるではないか、と感じました。中には、AIスピーカー「アレクサ」に「ミクロ心理学」を読ませたいという回答もありましたね(笑)。

 それでは最後に、皆さんに聞くだけではなく、僕のMy Favorite理論を3つご紹介しましょう。

当初は関心がなかった
著者が最も好きな3つの理論

 My Favorite理論の1つ目は、野中先生のSECIモデルです。自分で申し上げるのはおこがましいのですが、この章は会心の出来だと思っています。

 グローバルでみると、組織がどうすれば新しい知を生み出せるのか、そのメカニズムとはなにかという、いわゆる「知の創造」については、「ナレッジ・ベースト・ビュー」が注目されています。そのため連載中は、野中理論とナレッジ・ベースト・ビューをワンセットにして取り上げました。

 ですが、それは大間違いでした。本質的にみて野中理論のほうが間違いない。知の創造のプロセスを全て描いているのは野中理論しかないからです。そこで今回、章を切り出して書き下ろしました(ナレッジ・ベースト・ビューはコラム化)。おこがましいのですが、世界で最も野中理論を分かりやすく説明しているのではないかと思っています。

 2つ目がセンスメイキング理論です。これは、連載当時に最も反響の大きかった理論です。多くの経営者から「勇気付けられた」と言われましたし、先のランキングでもトップだったように、いま日本に最も必要とされている理論の1つだと考えています。

 3つ目はレッドクイーン理論です。この理論は、ガラパゴス化した日本市場ではそこそこ戦えるのに、グローバルでは全く歯が立たないという多くの日本企業を説明できるものです。章の見出しに「競争が激化する世界で、競争すべきは競争相手ではない」と示した通り、僕の周りで、いま本当に伸びている事業を行っている経営者ほど、「自分は同業のライバルとの競争に興味が無い」と口を揃えます。地味なのですが、書き手として「書けた!」と手応えを感じた理論でした。

 実は、これら3つ理論というのは、もともとあまり僕が知らなかった理論です。この連載のために必要だと思って調べて書いたものです。センスメイキングについても当初はほとんど興味がありませんでした。どれも苦しみながら書いたものでしたが、皆さんから大きな反響がありました。ですから、月並みですけれども、センスメイキング理論で書いているように、やはりこういう自分が知らない世界に飛び込んでチャレンジするというのがとても重要だということがよくわかりました。

 何より、『世界標準の経営理論』が出来上がったことで、僕がいまさら偉そうに、これらの理論を解説する必要がなくなりました。実際、今日の勉強会におけるグループディスカッションにおいても、それぞれのグループでどんどん議論が進んでいました。共通言語となる理論が1冊にまとまったからです。著者がテーブルを回っても、僕の存在を無視するぐらい、議論が盛り上がっていましたので、本を出して本当によかったと思っています(笑)。