『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』では毎月、さまざまな特集を実施しています。ここでは、最新号への理解をさらに深めていただけるよう、特集テーマに関連する過去の論文をご紹介します。

 DHBR2020年2月号の特集タイトルは「デュアルキャリア・カップルの幸福論」である。

 共働きで、どちらもキャリア志向を持つ「デュアルキャリア・カップル」は、世帯所得や生活水準が高いとされる一方、ハードワークをこなしながら家事や育児との両立を迫られる。仕事か家庭か、二者択一のジレンマに悩まされている人も少なくない。どうすれば負のスパイラルから抜け出せるのか。そして、企業には何ができるのか。

 INSEAD准教授のジェニファー・ペトリグリエリ氏による「デュアルキャリア・カップルが幸せになる法」では、デュアルキャリア・カップル113組を6年間かけて調査し、それぞれが課題をいかに克服したかを明らかにした。その共通項、すなわち人生における3つの転換点を乗り越える方法を提示する。

 コーン・フェリーのジェーン・スティーブンソン氏による「配偶者選びがキャリア形成の成否を分ける」では、ヘッドハンターとしての職務経験とともに、女性CEO57人に対する面談調査から、女性が成功するには配偶者選びが最も重要である、と主張する。カップルの間で仕事と家事の役割を適宜交代し、キャリアに関する意思決定を加重調整し、転居をいとわず、他者の相当な支援を得る必要である。一方が相手のために譲歩することがあっても、機会に応じて優先順位が変わることが、デュアルキャリア・カップルにおいては必要である。

 リーハイ大学准教授のダニエル J. リンデマン氏へのインタビュー「別居婚でもうまくいく3つの秘訣」では、デュアルキャリア・カップルへの具体的な解決策を提示する。仕事のために、結婚関係は維持しながらも、別居するカップルが増えている。関係をうまく続けるためには、住まいの距離、コミュニケーションツールの活用、終了期間の目標設定など考慮すべき点がある。また、同居を再開する際にも調整が必要である。

 ワークペアレントCEOのデイジー・ウェイドマン・ダウリング氏による「子育て夫婦のサバイバルガイド」では、働く親として成功するための5つの戦術を紹介する。仕事にも子育てにも深くコミットしようとするプロフェッショナルたちは、「仕事に集中できない人間」だと見なされることに不安を抱くと同時に、子どもと十分に向き合えていない自分に罪悪感を覚えている。自分のキャリアを構築しながら、我が子を愛するよき母・よき父であることは、想像を絶する苦労を伴う。ただ、それらを両立する際の課題を突き止められれば、先手を打って回避したり、緩和したり、コントロールしたりすることはできる。

 ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス取締役人事総務本部長の島田由香氏による「企業がデュアルキャリア・カップルの働き方を支援する方法」では、ポジティブ心理学を学ぶ筆者が新しい職場のあり方、人材育成のあり方について述べる。自身もデュアルキャリア・カップルの一人である島田氏は、いつでもどこででも働けるという画期的な人事制度を導入した。すると、社員一人ひとりがなぜそこで、どのように働くのかに意識が向き、結果として生産性向上につながった。同時に、自分で決めて選択できるという事実が社員の中にポジティブな感情を呼び起こし、企業への貢献度や意欲を高めた。

 慶應義塾大学大学院教授の前野隆司氏とEVOL代表取締CEOの前野マドカ氏夫妻へのインタビュー「日本のデュアルキャリア・カップルはどうすれば幸せになれるのか」では、夫が大学教授、妻が研究員かつ経営者という、夫婦でユニークなキャリアを築き、幸福学の本を共著で出版する2人が、デュアルキャリア・カップルが幸せになるためのヒントを示す。デュアルキャリア・カップルは所得や生活水準が高いとされる一方、ハードワークをこなしながら家事や育児との両立を迫られるなど過酷な話もよく聞かれる。とりわけ日本の女性は、社会的背景も相まって、仕事と家庭の二者択一のジレンマに悩まされ、心身ともに疲弊している。どうすれば負のスパイラルから抜け出せるのか。