インボイス制度は「受け取る側」の負担も大きい

インボイス制度では、請求書を発行する(売り手)側の企業は、国税庁に申請して13桁の適格請求書発行事業者の登録番号を取得し、請求書や領収書に記載しなければならない。登録番号を取得し、請求書などの様式を変更するなど、売り手側企業には一定の負担がかかるが、買い手である請求書の受け取る側には、もっと大きな負担がのしかかる。

支出管理クラウド「TOKIUM(トキウム)」を運営するTOKIUMの黒﨑賢一代表取締役は、「受け取る側にこそ隠れた課題がたくさんある」と言う。

例えば、ある企業に複数の請求書が届いたとする。仕入税額控除を受けるには、まず、それら全ての請求書の登録番号の有無をチェックし、記載されていたら、その番号が国税庁に認証登録されている番号なのかを国税庁のサイトにアクセスして、1件ずつ調べなくてはならない。登録番号は最初にチェックをすれば終わりではない。免税事業者が適格請求書発行事業者になったり、逆に適格請求書発行事業者から免税事業者になったりするケースも想定されるため、請求書が届くたびに確認が必要になる。

適格請求書発行事業者以外からの仕入れは、経過措置に合わせて、一定割合で税額控除を計算しなければならない。それも時期によって控除割合が変わるため、それらの処理も必要になる。さらに、消費税8%と10%の区別など煩雑な手続きもある。

「それを経理担当者がいちいち確認し、申請をするのは非常に負担が大きい」(黒﨑代表)

インボイス制度の施行が迫る中、このような「隠れ課題」が認知され始め、人海戦術でなんとか乗り越えようと考えていた企業からも、とても対処できないという“悲鳴”が聞こえるようになったという。それでもTOKIUMが2023年1月に発表した調査結果(図1参照)を見ると、インボイス制度に対する企業の認知度は低く、「対応すべき内容が不明」「未定」「わからない」を合計すると5割を超える。

「実は受け取る側こそ負担が大きい」インボイス制度の落とし穴。経理DXを推進する画期的な仕組みとは 図1「インボイス制度に関する調査」(TOKIUM調べ)(2022年10月実施)
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このように、10月の制度施行に向けての準備すらままならない企業が多い上に、「経理業務の課題はインボイス制度関連だけでなく、実は企業がずっと抱えてきた経理部門を中心とした経営上の『深刻な課題』があります。この課題に取り組まなければ経理DX(デジタルトランスフォーメーション)は進みません」と黒﨑代表は指摘する。

次ページからは、黒﨑代表の言う「深刻な課題」を、同社の調査を基に深掘りするとともに、インボイス制度への対応を含めたそれらの課題を解決できる具体的な方法を詳しく紹介する。