トラックの位置情報を可視化するために試行錯誤を重ねる
2024年4月から、トラックドライバーの時間外労働は年間960時間までに制限され、マンパワー不足によって、国内全体の物流に大きな支障を来すことが懸念されている。これが、物流の「2024年問題」だ。長距離でモノが運べなくなることや、物流パートナー企業の収益悪化、トラックドライバーの収入減少、輸送コスト(運賃)の上昇など、さまざまな悪影響が考えられるが、商品を卸会社や店舗に送るメーカーなどの荷主にとっては、荷物がタイムリーに配送されなくなる可能性があることが大きな課題となっている。
「当社は6年ほど前からこの問題を見据え、物流をもっと効率化できないかと検討を進めてきました。物理的に人手が足りなくなるのであれば、効率化によって配送体制を維持するしかありません。トラックドライバーの方々に無駄な時間を取らせないようなオペレーションの実現を模索しています」
そう語るのは、サントリーホールディングスサプライチェーン本部物流部の塚田哲也部長である。
サプライチェーン本部 物流部
塚田哲也部長
サントリーは2024年問題が取り上げられる以前から、荷主として物流パートナー企業の労働環境改善に取り組んできた。今回目指すのは、物流拠点におけるトラックドライバーの待機時間の削減だ。物流パートナー企業のトラックが物流拠点に入場し、荷物を積み込み・積み下ろし始めるまでの待機時間が短くなれば、トラックドライバーはより効率よく時間を使えるようになる。
待機時間を減らすための具体的な方法の一つとして、サントリーは車両位置情報の活用を検討した。トラックの位置情報を基に、到着見込時刻が分かれば、あらかじめ準備を進めておくことでドライバーは到着と同時に積み込みができるようになるからだ。
しかし、この仕組みの展開は想像以上に難航する。結局、サントリーは約6年の歳月を費やすことになった。次ページからは、一体何が障害だったのか、それを克服するために同社はどんな対策を講じたのか、詳しく紹介していく。