「2024年問題」の解決に向けて、さらなる「traevo」活用へ

期待は現実のものとなった。サントリーは23年6月、「traevo」を基盤とする新たな物流管理システムを稼働させた。同社は、全国で1日当たり繁忙期で約6000台のトラックを配送に利用しているが、そのうち約4割を占める首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)で運行するトラックを対象に、位置情報や動態情報が可視化できる仕組みを整えたのだ。

サントリーが6年越しで見いだした「2024年問題」解決の道筋。その鍵を握る物流テックとは国内ほとんどのメーカーのネットワーク型デジタコに対応し、車両位置情報と待機・休憩時間などドライバーの作業状況を取得可能。それをさまざまなシステムとAPI連携し、荷主サイドが輸送状況をリアルタイムで確認できる
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「『traevo』を基盤に採用したことで、17年から取り組んできたトラックの位置情報の見える化が、6年越しでようやく実現したのです」と小島課長は感慨深そうに語る。

同社はこのシステムを、納入先からの配送状況に関する問い合わせへの対応に活用している。

「酒類や飲料は、年末年始やゴールデンウィーク、夏季などに配送量が大幅に増加し、納入先からの問い合わせの頻度も高まります。従来は、電話で物流パートナー企業に配送状況を確認し、納入先にも電話で回答するというアナログな対応を行っていました。9割のトラックの動きがシステム上で見えるようになれば、物流パートナー企業に電話で対応いただく時間を削減することができます」と塚田部長は活用のメリットについて説明する。

これによって、各物流パートナー企業の従業員・ドライバーの対応時間は、年間で約6万時間、サントリーの問い合わせ対応時間は、年間9000時間削減される見込みだという。問い合わせへのレスポンスが早まる納入先も含めると、“三方良し”の効果が期待できるわけだ。

実は、TDBCが「traevo」を開発したのも、アナログな連絡・報告業務をデジタル化して物流現場の業務効率化を図りたい、というのがそもそもの狙いだった。

「電話による連絡・報告では、当事者の間だけで情報が閉じてしまい、履歴も残らないため、データが全体に共有されません。そうした情報の偏りが物流全体の業務効率化を妨げているのではないか、というワーキンググループでの問題提起を基に、『デジタルバリアフリー』を実現する情報共有プラットフォームとして開発されたのです」と鈴木社長は説明する。

サントリーは、「traevo」を基盤として開発した物流管理システムの活用の幅を、今後さらに広げていく方針だ。手始めに、トラックの位置情報、動態情報が可視化できるエリアを、現在の首都圏から年内には全国へと拡大する。

さらに、問い合わせ対応のための仕組みという枠を超え、物流の「2024年問題」の解決に向けて本格的に取り組んでいく考えだ。

「当社工場の配送センターの倉庫管理システムは、すでに『traevo』を基盤とする物流管理システムとつながっています。物流管理システムの展開が進み、当社工場以外の配送センターにも導入されれば、到着見込時刻を基に出荷する荷物を準備し、ドライバーの待機時間を削減できるような大規模な仕組みが出来上がるはずです」と、塚田部長と小島課長は口々に語る。

また、将来的にはトラックの位置情報、動態情報にサントリー以外の貨物情報も組み合わせ、現状一部に留まっている複数の荷主による共同配送を拡大したいと考えている。

「『2024年問題』を解決するための鍵となるフィジカルインターネット(複数企業が倉庫やトラックをシェアし、物資を効率的に輸送する仕組み)の構築にも積極的に貢献していきたい」と小島課長。

traevoの鈴木社長は、こうしたサントリーの取り組みをはじめ、物流の「2024年問題」の解決に向けた企業の取り組みを、「データを共有することで活用可能となる情報基盤を、社会インフラとして整備・提供することで側面から支えていきたい」と語る。

サントリーが6年越しで見いだした「2024年問題」解決の道筋。その鍵を握る物流テックとは22年、「traevo」はデジタル庁主催の「good digital award」のスタートアップ部門で優秀賞を受賞

「間近に迫った2024年問題の対応に関しては、政府も荷主、物流事業者を対象に、①商慣行の見直し、②物流の効率化、③荷主・消費者の行動変容を促すための抜本的な対策として「物流革新に向けた政策パッケージ」を決定し、年明け早々の通常国会で法制化する計画です(資料リンク後掲)。当社も待ったなしの状況と捉えており、急ピッチでさまざまな業種での『traevo』の活用トライアルを進めています。多くのサプライチェーンで同じプラットフォームの活用が進めば、より多くのトラックの動態やドライバーの労働状況が可視化されるため、物流の全体最適につながっていくと考えているからです。さらに、『traevo』に集約されたデータを活用するさまざまなシステムとの連携を実現させることで、より使い勝手のいいプラットフォームに発展させていきます」(鈴木社長)

「traevo」は、「ドライバー不足」という深刻な社会課題を解決し、日本の産業の維持・発展を支える有力な一手となりそうだ。

●問い合わせ先
株式会社traevo
〒106-0032 東京都港区六本木3-2-1 六本木グランドタワー
URL:https://traevo.jp/

●「フィジカルインターネット実現のロードマップ」
TDBC Forum2023での経済産業省 発表資料
https://unyu.co/forums/2023.html
●「第11回 持続可能な物流の実現に向けた検討会」公開資料(物流革新に向けた政策パッケージなど)
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/sustainable_logistics/011.html