アメリカでは当たり前のホームステージング
米国不動産投資コンサルタント
杉浦隼城氏
ホームステージングは、1970年代にアメリカで生まれた。ステージングとは、本来、舞台演出のことで、そこから住宅を美しく演出することにつながった。
現在、アメリカではホームステージングが不動産売買におけるスタンダードなサービスになっている。アメリカの不動産事情に詳しい日米不動産協力機構(JARECO)の杉浦隼城氏は、次のように語る。
「アメリカ人は、生涯で平均7~8回は住宅を買い替えます。不動産価格が上昇し続けているので、不動産を持たないことは逆にリスクになると考えるのです。そのため、比較的若いうちから不動産を購入します。そして、結婚して子供が生まれて育ってと、その時々のライフステージに合った住宅に住み替えていきます。不動産は“終の住処”ではなく資産として捉えられていますから、普段から売買しやすいようにきちんと管理しながら住むことが当たり前。そうした文化が、ホームステージングが普及した背景にあります」
アメリカにおける不動産取引の約8割は中古住宅であり、中古住宅は市場が大きく、流動性も高い。特に都心部の高級住宅地などでは、土地よりも建物の価値が高く、丁寧にメンテナンスされていることが高価値につながっている。その上で、物件を少しでも高く売るため、ホームステージングの出番が多くなっているのだという。
National Association of REALTORS(全米リアルター協会)が全リアルター(不動産仲介人)を対象に毎年実施しているアンケート調査の最新版「2023 Profile of Home Staging」によると、「ステージングがバイヤーの見学に影響がある」とした回答は約9割(グラフ1)、「ステージングによって販売価格が上がった」と約4割が回答している(グラフ4)。影響としては、「将来の生活をイメージしやすい」「実際に見学してみたいという意欲が高まる」「好みのデザインの場合は家の価値にプラスの影響を与える」といった項目が上位を占めた(グラフ2)。他にも、ホームステージングを施すことで販売期間が短縮したという回答が5割近くあり、アメリカではホームステージングに実効性があると認識されていることが分かる。
また、「アメリカの不動産仲介会社は、圧倒的に女性が多い。テレビドラマの主人公になっていることもあり、仕事の一つとしてホームステージングの様子が描かれていますから、一般の人にもホームステージングに対する認知は浸透しています」と杉浦氏は笑顔で語る。