多様化・複雑化するサプライチェーン関連リスク

コロナ禍が地球規模で広がり、世界中の生産と物流が一気に滞ったことは、いまだ記憶に新しい。普段は誰もがほとんど気に留めない「疫病」という要素が、サプライチェーンを機能不全に陥らせる“思わぬリスク”であることを知らしめる出来事だった。

ロシアによるウクライナ侵攻も、国境をまたぐ調達ルートの寸断や、資源高による調達価格の高騰などを招いた。平時にはあまりピンとこなかった地政学リスクが、実際に直面すると、いかにサプライチェーンに悪影響をもたらすのかを痛感したのではないだろうか。

この他にも、地球温暖化に対処するため、末端のサプライヤーに至るまで対応を求められている温室効果ガス削減、サプライヤーによる人権蹂躙の監視など、サプライチェーンに関わるリスクマネジメントのテーマは増加の一途をたどっている。

また、近年はサプライチェーンの機能を維持させるシステムやネットワークを狙ったサイバー攻撃も急増している。生産や物流がストップするだけでなく、経営そのものの存続が脅かされるほど甚大な被害を受けるケースもあるようだ。

「かつては、サプライヤーの倒産や工場での設備トラブル、原材料不足による生産停止などに目配りをしているだけで良かったのですが、サプライチェーンに関わるリスクは年々多様化、複雑化し、調達・購買担当者を悩ませています。まずは『どんなリスクが存在するのか?』という全体像を俯瞰することが、リスクマネジメントの第一歩です」と語るのは、大手企業から中堅・中小企業まで、あらゆる業種向けにサプライチェーンマネジメントの支援サービスを提供している未来調達研究所コンサルタントの坂口孝則氏である。

次ページからは、サプライチェーンに関わる「七つのリスク」を詳しく解説するとともに、それらのリスクへの対処法を具体的に紹介する。