社員のウェルビーイングを重視して受注を絞り込む

一方、水コンサルタントとして活躍できる技術士を多数抱えながらも、受注を抑制している点にも注目したい。

「多数の引き合いを頂いていますが、長時間労働を強いる状態にならないよう受注はコントロールしています。お声掛けいただいた自治体のお役に立ちたいという思いはありますし、全て受けていけば売り上げの2桁成長も十分に可能ですが、誰かが無理をしなければならなくなります。そういう業務の進め方は持続可能性に乏しいですし、離職者を出すことにもつながりかねません」(菅社長)

こういった考えに菅氏が至ったのは、12年に社長就任以降、社員一人一人と向き合い続けてきたからだという。

水インフラの持続可能性を高めるため、「技術士」育成や社員のウェルビーイング向上に力を注ぐ12年にわたって続ける全社員との意見交換会の模様をまとめたパネルを前に、その意義について語る菅社長

「毎年、全国10カ所余りの拠点をくまなく回り、アルバイトを含む社員全員と対話をする意見交換会を続けてきました。自分の思いをストレートに伝えたいという気持ちと共に、言いたいことが言える組織にしたいという強い思いがありました。実際に言葉を交わすと、普段は聞こえてこない不満や、顔色が悪かったり元気がなかったりという個々人の状態も伝わってきたのです。上下水道施設の改築更新では問題が起きる前に計画的に更新を行う予防保全を実施しますが、人においても心身の健康を保って力を発揮するためには、予防保全が大事だと思いました」(菅社長)

ウェルビーイング経営を実践するのも同じ思いからだ。業界内に先駆けて開始した胃・大腸の内視鏡検査やがん検診などのヘルスケアプログラムをより促進し、ウォーキングで体を動かす機会を増やそうと社員に呼び掛けている。そうした取り組みが評価され、21年3月から3年連続で健康経営優良法人にも認定されている。

「Apple Watchを支給して、身体活動量をチーム制で競い合う社内イベント『アクティビティコンペティション』も実施しています。普段は業務以外のやりとりがない人たちが、身体活動量という共通のテーマで話し合うなど、社内コミュニケーションの活性化にもつながっている手応えがあります」(菅社長)

水インフラの持続可能性を高めるため、「技術士」育成や社員のウェルビーイング向上に力を注ぐ社内カフェコーナーでの打ち合わせの様子。職種を超えたコミュニケーションも活発だ

新・官民連携「ウォーターPPP」にも意欲

ウェルビーイングを向上させ、水コンサルタントとしてさらに働きがいのある就業環境を目指す菅社長。23年6月に内閣府が打ち出した、上下水道や工業用水における管理更新一体型マネジメントの新しい方式「ウォーターPPP」にも意欲を見せる。

ウォーターPPPでは、従来3〜5年だった契約期間を原則10年として、管理と更新の一体的なマネジメントを行う。自治体の人手不足や財政難、人口減少が深刻な影響を及ぼす現状において、効率的な運営により公共サービスを充実させる手段として期待は大きい。契約期間が長く事業者にとってのメリットも大きいが、水コンサルタントにはより俯瞰した視野に立った計画の作成・立案が求められる。菅社長は「当社は調査・計画・設計に強みがあるので、浄水場や下水処理場の土木・建設工事を行う建設会社、設備工事を行うプラントメーカー、維持管理を行うメンテナンス企業の方々との間でコーディネーター的役割を果たし、適切な管理更新事業を自治体にご提案していきたいと思っています」と展望を語る。

社会は予測不可能な変化を続けているが、人が水を必要とすることは変わらない。安全安心な水を供給し、使われた水を集めて環境に配慮した処理を行う――。この循環を守るため、オリジナル設計はその担い手である社員のウェルビーイングにも寄り添いながら、これからも地域社会に貢献していく。

※1 出典:公益社団法人日本技術士会「技術士第二次試験統計情報」
https://www.engineer.or.jp/c_topics/001/attached/attach_1013_1.pdf

●問い合わせ先
オリジナル設計株式会社
東京都渋谷区元代々木町30-13
03-6757-8800
URL:https://www.oec-solution.co.jp/